「だんだんと色づいてくる感じがした」
作品が完成していく過程
ーー今回、大下ヒロトさんを主演に迎えていますが、キャスティングされた理由を教えてください。
「大下さんは、羊文学の『あいまいでいいよ』という曲のMVに出演されていて、その現場に私も参加したのが出会いのきっかけでした。合間の時間に映画の話をしたりして『面白い人だなぁ』と思っていたんです。
魅力的な表情っていうんですかね…お顔ももちろん魅力的なんですけど、表情って、目があって、鼻があって、口があって、それがどう動くかじゃないですか。一度写真も撮らせてもらったこともあるんですけど、パッと切り取る顔から、『こんな表情が生まれるんだ…』という動きの機微というか。そんなところに惹かれて是非映画を一緒に作りたいなと思いお願いしました。」
ーーリハーサルも行いましたか?
「読み合わせをしました。芝居の雰囲気は最初から出来上がっていて、映画で観ていただいたあのまんまなんですよ。読み合わせの時点でイメージの共有は出来ていたので、現場でもリテイクはほぼなかったですね」
ーー本作に登場する喫茶店や広大な自然、終盤で登場する木など、ロケ地がどこも印象的で素敵でした。ロケ場所はどういった流れで見つけましたか?
「脚本を書いてる時に自分の中で映像化されているので、そこに合う場所を探していく作業になります。スタッフには『いや、そんなところ日本には無いから』と言われて(笑)。予算とかスケジュールとか色々な制約がある中でしたが、ここを譲ったらしょうもない作品になると思ったので、『ここは絶対譲らないぞ』と。
その中でも特にこだわったのは自然ですね。私が伊豆の出身なので、伊豆半島の地元の人に『こういう所ない?』『ああいう所ない?』と聞きまくって見つけた高原と海で撮影しました。脚本を書いている時は、塗り絵の最初みたいな黒い線ばかりの一枚の紙だったのが、ロケ地が決まって、キャストが決まって、そうやってだんだんと色づいていく感じがしましたね」
ーーたしかに高原の風景が映画に深みと広がりをもたらしていました。最後の木の場所はどこで撮影されたんですか?
「あの木も同じ高原の敷地内にある場所なんですよ。崖みたいになっていて、下には道路があるんですけど、真下から撮ることでポツンと木が生えているように見えるように撮影しました。撮影の浅津義社さんと、『天国みたいな感じに見えたらいいね』と話していて、多幸感のある抜けのいい場所を探していたところ、あの木を発見しました」