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②ストーリー設定の天才:思い付きの設定の辻褄を合わせる

ドラゴンボール
サンディエゴで開催されたコミコンGetty Images

『Dr.スランプ』は、基本的に1話完結ものであり、行き当たりばったりで毎週、ストーリーを考えていたのが、わかる。

しかし、後にストーリーものとして、名高い名作である『ドラゴンボール』も同じような手法で描いていたとは驚異的である。加えて、読者も忘れたころに、きっちりと思い付きだったであろう設定の辻褄を合わせているのだ。

例をいくつか挙げてみよう。

単なるその場しのぎのキャラとして登場させた亀仙人が、実は武術の達人・武天老師として、再登場。悟空、クリリン、(後にヤムチャも)の師匠となり、全員、今や世界的に有名な必殺技「カメハメ波」を使えるようになる。

こちらもその場しのぎのキャラと思われた牛魔王も、かつての亀仙人の弟子と発覚。その娘であるチチが、幼少期の悟空を好いて「いつか結婚してもらえないか」と求愛したところ、「オラ、もらえるもんならもらうぞ」といった、何気ないギャグ会話パートがある。

その会話は後の展開で効いてくる。大人になった悟空とチチは天下一武道会で再会。しかし、悟空はすっかりチチの存在を忘れており、彼女の怒りを買う。しかし、試合でチチを負かせた悟空にますますチチが惚れ直し、急遽、結婚するというエピソード。このくだりは、あまり話題に上がらないが、非常に秀逸である。

なぜなら、その後、チチと結婚したことにより、孫悟飯、孫悟天といった息子たちが誕生し、欠かせない存在として、物語をさらに彩ってゆくからだ(ちなみに、サイヤ人と地球人の混血児は、生まれつき戦闘能力が高いという設定も、秀逸)。

また、幼少時代の悟空が壊滅させた悪の組織・レッドリボン軍を「人造人間編」にて、あえて復活させている。その残党であるドクター・ゲロが開発した人造人間たちは、前シリーズで最強の地位を築いた宇宙の帝王・フリーザより強い。それが明らかになった時、当時の読者たちは空いた口が塞がらなかった。

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