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⑤強靭な精神力:編集者からのダメ出しにも屈しない不屈の闘志

ドラゴンボール
サンディエゴで開催されたコミコンGetty Images

天才と呼ばれる鳥山明氏だが、漫画家としての苦労も相当重ねている。そこには後に伝説の編集者となる、鳥嶋和彦氏の存在が欠かせない。

『Dr.スランプ』は、そもそも、発明家である則巻千兵衛が主人公の予定であったが、彼が生み出したアンドロイド・アラレちゃんを主人公にしろと指示したのは、鳥嶋氏。最初は嫌がっていた鳥山明氏だが、アラレちゃんを主人公にしたところ、空前の大ヒットを飛ばし、アニメ版は国民的なものとなった。

また、『ドラゴンボール』では、当初は西遊記を模したアドベンチャーものであったが、人気はイマイチであった。鳥嶋氏に「主人公に魅力がない」とダメ出しされ、純粋に誰よりも強くなりたいというキャラクターへとブラッシュアップ。

後にバトル漫画の礎ともなった「天下一武道会編」を描くことによって、一気に人気は加速し、『少年ジャンプ』(集英社)隆盛期における、人気ナンバーワンの漫画として君臨することとなった。

また、『ドラゴンクエスト』のキャラクターデザインをしていたことによって構想を得たという『ピッコロ大魔王編』は、ご本人曰くも読者から見ても、ターニングポイントになっているのは明らかである。

ここから、完全なるバトル漫画へとシフトチェンジしてゆく。ベジータ、フリーザ、人造人間、魔人ブウといった次々に現れる強敵たちを撃破してゆく展開に、「次はどんなやつだ!? オラ、ワクワクするぞ」と、胸を焦がしていたかつての少年たち。

しかし、ここにも、歴代の担当編集者との闘いの舞台裏はあったという。そもそも、「ピッコロ大魔王編」で連載を終わらせたかった鳥山明氏だが、あまりの人気ゆえに、引き伸ばし工作が延々と続いた。

しかも、その最中でも歴代担当編集者からのダメ出しは容赦がなかったという。

例えば、『人造人間編』にて、ラスボスとして19号・20号(ドクター・ゲロ)を登場させたところ、「ジジイとデブじゃないですか」と一蹴され、渋々、少年少女姿の17号・18号、得体の知れない生物であるセルといった後に人気となるキャラクターたちを生み出したのは、編集者とのせめぎ合いがあったからこそ。ファンとしては嬉しい怪我の功名である。

また、「魔人ブウ編」では、死亡した悟空に代わり、孫悟飯を主人公にした日常ギャグ色の強い作風にしようとしたところ、編集者から「待った!」がかかり、やはりバトルものへと移行。本編最強の敵・魔人ブウを生み出すこととなった。

しかし、「魔人ブウ編」は、ブウの造形やキャラクター性も含め、非常にコミカルな描写も多く、鳥山明氏の最後の抗いが垣間見れ、『ドラゴンボール』初期のテイストも混ざっており、実に興味深い。

最終巻の後書きには、「最後まで描き切ってよかったです」という、爽やかなコメントも残しており、氏が他界した今読むと、なおさら涙を拭えない次第だ。

最後に世界中のファン、誰しもが思っていることを声高に記したい。

「ありがとうございました、鳥山明先生! 『ドラゴンボール』のない世界線、人生なんて考えられません。今秋から放送される『ドラゴンボールDAIMA』(フジテレビ系・東映アニメーション)も、今から、オラ、ワクワクすっぞ!」

(文・ZAKKY)

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