「辰巳と後藤はルパンと銭形みたいな関係性」
―――結果的に後藤さんは辰巳を助ける“後藤”という役を演じることになりました。脚本を執筆する際、“後藤”というキャラクターをどのようにイメージしていましたか?
小路「後藤さんにはリハーサルの時から『辰巳と後藤はルパンと銭形みたいな関係性でいてほしい』っていうことをずっと言っていました。憎しみ合ってはいるけどギリギリのところ
では頼るし、ちゃんと助ける」
―――小路監督の言葉は演じる上でヒントになりましたか?
後藤「なりました。辰巳と対峙するシーンはまさにその部分が大事だと思うので。“後藤”が辰巳のことを許すのか許さないのか、観る人がギリギリまでわからないようにしたいっていうのは凄く考えてましたね」
――「今後は俺たちの仲間になって、地下に潜って泥水啜って生きていけ」という“後藤”のセリフが印象的ですが、彼は裏社会においてどのような立ち位置の人なのでしょうか?
小路「ヤクザもすっかり衰退しきっていて、その中でも底辺にいる人たちが支え合って生きているというイメージです。どんなに苦しい思いをしてでも先を進む覚悟があるのかと辰巳に問うシーンなので、その切実さが伝わればいいなと思って書いたセリフでした」
―――“後藤“が辰巳と葵にライフルを渡すシーンも印象的でした。
小路「あのシーン、最初の方に撮ったイメージがあるんですけど、違いますか?」
後藤「あの銃渡すとこですよね。あれは終盤です。現場で監督から『歌舞伎みたいな喋り方になってるんで、やめてください』って言われたんですよ」
小路「歌舞伎みたいって(笑)。そんな酷いこと言いましたか?」
後藤「はい。『後藤さん、歌舞伎みたいになってる』って。そういう言葉が忌憚なく出るということは打ち解けている証拠なので、撮影は終盤だったと思いますよ」
小路「そうか、言われてみれば終盤だったかもしれない。『舞台が抜けてないね』というニュアンスだったと思います。ちょうど直前まで後藤さんは河合優実ちゃんと2人で舞台をやっていて、その直後の撮影だったんで」
後藤「自分もそのセリフが好きで、家で入念に練習して現場に臨んだんですよ。それが良くなかったのかもしれません。そうじゃなくて、遠藤さんと実際に向き合って出てくる感情を大事にしたほうが良かったというか」
―――劇中、辰巳が言うように「気持ちを込めすぎると失敗する」。
後藤「そうですね。今回の映画は役者一人ひとりが、役を演じてはいるんですけど、役者そのものとして映っているような感じがします。そういう映画ですよね」
小路「泥水啜って生きていかないといけないですもんね、役者も」