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世界の映画祭で高評価! 映画監督・宇賀那健一インタビュー(後編)。12月10日公開の長編映画『渇いた鉢』に込めた思いを語る

text by ZAKKY
フォトグラファー尾立温美

2016 年より毎年約1 本はリリースという、驚異的なスピードで作品を創り上げている映画監督・脚本家の宇賀那健一。監督作は海外の映画祭で好評を博し2022 年10 月に開催されたモントリオール・ヌーヴォー・シネマ映画祭では、宇賀那健一短編特集が開催。現地で舞台挨拶を実施するなど、大きな話題をよんだ。12月からは、2本の新作映画が公開される。インタビュー後編は、12月10 日公開の長編映画『渇いた鉢』についてお話を伺った。

(聞き手/文・ZAKKY)

まずは12 月10 日(土)公開の新作情報をチェック!

『渇いた鉢』


【STORY】
大切な家族を奪われ、ただ1 人取り残されてしまった男性。
ひとくくりに被害者遺族と世間から呼ばれてしまう人達のやり切れない思い、理不尽な処遇。周囲の身勝手な好奇に晒される不条理。
どうしようもなく大きな喪失感に苛まれながら、彼は何を思い、何を願い、何故生きるのか。
不安定にぐらつきながら狂おしく歩む姿をただひたすらに描き切る。

【予告編】

STAFF
監督:宇賀那健一
プロデューサー:安部一希
脚本:木村暉
共同プロデューサー・撮影・編集:小美野昌史
音楽:小野川浩幸
録音・整音・効果:紫藤佑弥
衣装:小笠原吉恵 中村もやし
ヘアメイク:くつみ綾音
美術:岡田匡未
助監督:福田和弘
制作:真田和輝
製作プロダクション:Vandalism
撮影協力:高崎フィルムコミッション
制作協力:LONDOBELL.inc
企画協力:ブレス
製作:『渇いた鉢』フィルムパートナーズ

CAST
安部一希、山本月乃、三溝浩二、東龍之介、はぎのー、遠藤隆太、田中栄吾
青島心、贄田愛菜、松浦祐也

概要
2022年|日本|97 分|カラー|デジタル|スコープ|ステレオ|
12 月10 日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国劇場公開

人々の生を押しつぶす過酷な現実を
3つの才能が結集することで映像化

フォトグラファー尾立温美

―この作品の成り立ちを教えてください。
「主演でありプロデューサーも務めた安部一希くんと、 “ 何かの喪失もの を創りたい”と話したことがきっかけですね」

―今回はご自身ではなく、脚本のクレジットは木村暉さん単独となっています。
「今まで共同脚本として誰かと取り組むことはあったのですが、単独でお願いしたのは初めてでした」

―初めて監督業に専念した感覚はいかがでしたか?
「共同脚本で書く際も、僕はせっかく書いて下さった部分をまるっと直したりしちゃうんです。でも今回は意見と希望は伝えはしたものの、自分で筆は入れていない。だから台詞の語尾とかシーン構成とかも今までとは全く違うんですそれはとても面白かったです。早い段階から演出に専念することが出来ましたし」

―“音”に対するこだわりは過去作から一貫していますね。
「僕の作品としては、珍しくステレオなんです。音の動きも当然少なくなりますし、今までの作品と比べると効果を付けてる数も少ないです。その方が日々の暮らしの切なさを演出できると思ったんです。曲数も極端に少ないですね」

フォトグラファー尾立温美

―内容は本当に辛いストーリーですよね 。…
「ええ。実際に起こりうる辛い現実を、ただ、ひたすら画面越しに見続けるという映画です。安部くんは役作りに励むあまり、準備期間からクランクアップまでの間に15kgも痩せましたからね。彼はプロデューサーとして陣頭指揮を執って、予算集めから何から奔走してくれました。本当に、この作品にかける意気込みが凄くて、胸が熱いです」

―辛いストーリーですが、その分、カタルシスが感じられる作品だと思います。特に、クライマックス前のあるはずだった日常のシーンには感動しました。
「そう言ってもらえると嬉しいですね。あのシーンは、たしか脚本の木村くんからの提案でした。過去や想像上のシーンって、エフェクトをかけたりしがちですがあえてそれをしなかったのも、良かったと思っています」

―誤解を招く言い方かもしれませんが、受け入れられない人には、受け入れられない映画だとも思います。
「ああ、それはそうだと思いますよ。昔はそういった反応を気にしていましたが、今はむしろそういう映画こそ撮る意味があると思っています」

―個人的には、大変感銘を受けました。名作だと思っています!
「ありがとうございます。今回のキャストは、多くの方がワークショップで知り合った方々なのですが、この題材をやったときはワークショップのときから空気がひたすら重くてきつかったんですよ。ワークショップですらそうなので現場の役作りはもっと大変だったと思います。だから、そう言ってもらえたら俳優部の皆さんも報われると思います」

「大事な人を殺された時、どうすればいいんだろう」
主演・安部一希による本作への想い


最後に主演俳優であり、プロデューサーである安部一希からのコメントを紹介したい。

「この企画が動き出したころ、宇賀那監督と脚本の木村くんと『大事な人を殺されてしまったらどうすればいいんだろう』という話をしました。復讐を考えを考える人も、許そうという努力をする人も、ただただ何も出来なくなってしまう人を考えもいるでしょう。実際自分がその状況に見舞われた時に、何を考えるのかは分かりません。もちろん答えなんか出せません。ですが、そんな状況の中で生きている方々が実際にいらっしゃいます。そんな悲しいけれど、当たり前なことをもっと強く心に留めておかなければいけないと思いました。一人の役者として『被害者遺族』なんて言葉で括るのではなく、『松村大地』という一人の人間を演じることに全てを懸けて臨んできました。松村大地の姿を見て、そして『渇いた鉢』という映画を観て、僕達の想いを感じて頂ければ嬉しいです。そして願わくは誰かが、あと少しでも生きる力となれればと思います」

宇賀那氏のインタビュー中、筆者は“受け入れられない人には、受け入れられない映画”と伝えた。しかし、矛盾するかもしれないが、万感の想いを込めてこの作品を、ただ観てほしい。幸福なこととは真逆の、これ以上もない不幸。その圧巻のリアリティーには、きっと感情が揺さぶられるはずである。
(聞き手/文・ZAKKY)

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