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「川西くんの持っている内生の部分から、清澄らしさを探していった」
映画初主演となった川西拓実(JO1)との役作り

©むつき潤・小学館/「バジーノイズ」製作委員会
©むつき潤小学館バジーノイズ製作委員会

―――桜田ひよりさんをキャスティングされたのは風間監督とプレス資料にありました。ドラマ『silent』でも共演されていますが、彼女の魅力についてお聞きできればと思います。

「ご一緒する前に感じていたひよりさんの印象は、はつらつとしていて、明るくて、という割と“陽”な気分を持っている人だと思っていたのですが、いざ現場でご一緒してみると、冷静で自分の感覚に純粋で…でもその感覚に純粋っていうのは、想いや微熱みたいなものを持っているというイメージです。

その微熱を常に持っているから、人物の心のゆらぎなどを繊細にキャッチできて、加えて、それを体現できるスキルも技術も持っているので、そういったところの頼もしさと、ひよりさんの持っている他の一面をもっと見てみたいという想いが重なったオファーでした」

―――先程、桜田さんのインタビューの際に、風間監督から『自分自身について聞かれました』と仰っていたのですが、これにはどういった意図があったのでしょうか?

「潮の持っている属性というか、抱えている葛藤みたいなものと、ひよりさんが見せない“隠”の部分の輪郭が近いような気がして、僕のイメージ通りの潮を作っていくのではなくて、ひよりさんのパーソナルな部分を開示してもらって、潮を作っていきたいという思いがあったので、確かに今回、役の話よりも、ひよりさん自身の話を聞くことが多かったかもしれないです」

―――清澄の『自分の大好きなものを大事にしている。それに勝手に触れないで欲しい』という、有名になることを拒むような心情が、川⻄さんの繊細な演技からひしひしと伝わってきました。演技指導などは積極的に行われていたのでしょうか。

「そうですね、ひよりさんとの向き合いとほぼ同義ですが、川西くん自身、アーティストとして音楽に精通しているお仕事をされていることもあって、誰かに届けるという経験や、自分の表現に向き合うときに、どういう葛藤があるかなど、自分自身と紐付けてもらいました。

その葛藤に対して、川西くんとしての清澄を開いて、共有していって欲しいという撮影だったので、『こうして欲しい』と、ガチガチに演出をしていたというより、川西くんの持っている内生の部分から、清澄らしさを探していったので、彼もひよりさんと同じ気持ちでいたかもしれないですね。『自分自身のことを聞かれた』と(笑)」

―――演技指導というより、ご自身らしさから役に落とし込んでいかれたんですね。

「そうですね。これは演技指導とは違いますが、表現を作っていくときに、音楽に例えながらお話をさせていただきました。今回特に、清澄の作る音楽とともに清澄が成長していくこともあって、音楽の段階を踏みつつ共有しながら、彼の感覚的にイメージしやすい言葉で演出していきました」

―――航太郎役を演じた井之脇海さんとは、映画『帝一の國』(2017)ぶりの共演でした。プレス資料に『いつかまた一緒に。という願いがあった』とありましたが、『帝一の國』で共演した際にそう思われたのでしょうか?

「そうです。『帝一の國』は、若い俳優がたくさんいる現場だったんですが、その中で、非常に冷静な目で、現場を俯瞰的に見ている姿が印象的で、彼が考えていることに触れてみたいと、興味が沸いたんです」

―――『圧倒的な存在感を演じられる俳優』ということで、今回、風間監督が井之脇海さんをご希望されたそうですが、7年ぶりに共演した彼の、役者としての成⻑ぶりはどのように感じられましたか。

「彼は、『帝一の國』の時に、編集室に遊びに来てくれるくらいだったので、作られていく過程にも興味があるんだろうなと思っていました。だから、現場の佇まいとして見ている目線が、演じ手側の視点もあれば、作り手側の思いも理解して表現に変えていく力がついていったと思います。

そういう意味では、今回、チームの一人として隔てなく、スタッフやキャストに寄り添ってくれたんじゃないかと思います。それは本当に魅力的ですし、安心して頼れる存在でした」

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