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「今まで勉強してきたお芝居のセオリーとまったく違う作業だった」
セリフの発声について

写真: 宮城夏子
写真 宮城夏子

―――今のお話は、山﨑さんの眼差しのお芝居に注目して見る、あるいは見終わった後に目の芝居がどうだったかを反芻して、映画への理解を深めるものだと思います。声のお芝居に関してはいかがでしょうか?

「声に関しても音程がちょっとでも違うとNGが出る感じでした。都楳さんって音のあり方を細かくイメージしている方で。

それまでの現場では、演出家の方から役の感情とか意図とかをロジカルに伝えられることが多かったんですけど、都楳さんは音の感覚に根ざした演出をされるので、戸惑うこともありました。わからない時は監督と対話をして、音の高低などを細かくチューニングしながら演じていきました」

―――本作はほぼアフレコですか?

「そんなことないです。ボートのシーンなどはカメラの位置が遠くて声が取れなかったのでアフレコでしたけど、現場の音を使っているシーンもたくさんあります」

―――屋上のシーンなどでは、タエコとショウが距離は離れているのに互いにほとんどつぶやくような声量で会話を交わしていましたね。

「ショウもタエコも対話をしているようで自分と喋っているんですよね。 ショウはタエコに話しかけているようで自分に語り掛けていて、タエコも自分と対話しているといった感じのシーンになっていますね」

―――ちなみに、このシーン、お互いのセリフって現場で聞こえていましたか?

「聞こえてなかったですね。屋上は雑音が凄くて。しかも演出でお互い口もあまり動かしていないので、スタッフの方が画面に映らないところで合図を出してくれて、それをきっかけに返事をする場面もありました。

普通は相手の口から聞こえてきた言葉に反応するようにしてお芝居をするじゃないですか。でも、このシーンはそうではなく、会話になっているのかなっていないのか判然としない。今まで勉強してきたお芝居のセオリーとまったく違う作業だったので不思議な気持ちで演じました」

―――もし仮に騒音の中でも聞こえるような声量で会話をしていたら、シーンの印象は180度変わりそうですね。声の特異なあり方によって観客は夢の中を覗いているような感覚にさせられます。

「本当にそうですね。例えば『悲しくて涙を流す』というト書きがあったら、相手の動きとかセリフから悲しさをもらって泣くと思うんですけど、今回はそれができませんでした。

発声する上で2つ軸を作ったんです。一つは取り繕っている時は喉で声を出すということ。一方で、ハンバーグ食べて『痛い』って言うシーンなどでは腹から声を出す。そこは意識して使い分けました。つい出てしまう本当の声は腹から出るけど、本心とは違う言葉、タエコが痛みから逃げている時に出す声は全部うわずったものになっていて。

これに関しては具体的な演出があったわけではなく、作品の性質上、情報量が少ない映画なので、演じる側がそうした部分を意識しないと観る人はよくわからないまま観終わっちゃうなと思って、考えて演じました」

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