イ・チャンドン、ダルデンヌ兄弟からの影響について
―――本作では結衣をはじめとした少女たちのピュアであるが故の危うさが描かれています。パパ活アプリや睡眠薬を使った遊びなど、かなりスキャンダラスな描写を盛り込まれていますが、どのような狙いがありましたか?
「自分がそういう映画が好きっていうのもあるんですけど、やっぱり物語に起伏をもたせる上で、ちょっとはみ出る描写によって観客の集中力を喚起するきっかけになったりするので。あまりにも突然すぎて、そこで離れる人ももちろんいると思うんですけど。そうしたリスクも承知で入れたかったんです。
あとは表面的には和気藹々としている女子の間にもヒエラルキーがあって、1人が何かしだしたら一気にみんなが良くない方向に流れたりする。あの年代ならではの危うさを表現したいなと思って、ああいうシーンを考えました」
―――個人的にはピーター・ジャクソンの『乙女の祈り』(1994)や相米慎二の『台風クラブ』(1985)といった作品を想起する瞬間がありました。今回参考にされた作品はありますか?
「韓国のイ・チャンドン監督、あとはダルデンヌ兄弟とか、現実で起きているような出来事を、リアルにすくい取る作風が好きなんです。たとえばイ・チャンドンの『ポエトリー アグネスの詩』(2012)には、子供たちの危うさが描かれていて。子供の捉え方とかにおいて参考にしていた部分はあったかもしれません」
―――結衣は男からお金を盗んでホテルから逃亡するシーンで、金網の下を潜っていきますが、どこかダルデンヌ兄弟の映画を観ているようでした。あの場所をよく見つけましたね。
「あれは作ったんですよ。金網を切って中島さんのサイズに合わせて高さをアレンジして、ちょうどギリギリのやつを美術部に作ってもらったんです」
―――その前のシーンで、男の大きい体格をしっかり映していたので、金網を潜り抜けた瞬間「大丈夫だ」と思えました(笑)。しかし、まさかお作りになっていたとは驚きです。さすがのダルデンヌ兄弟も金網は作らないのではないでしょうか。
「いやいや(笑)。ああいうのが好きなんですよ。ダルデンヌ兄弟の作品を観ていると、塀を越えたり、ギリギリの所を歩いたり、水に溺れそうになったり、観る者をハラハラさせる描写が凄い上手だなと思って。その辺は参考というか、どこかで染みついているところがあるかもしれないですね」