チャランポランな父の知られざる姿とは? 監督が構想6年をかけた物語
大黒柱を失った鉄工所を必死の思いで立て直そうとする早希。しかし不幸は続く。鉄工所を支える熟練の職人である高橋鉄蔵(佐川満男)が、倒れてきた鉄骨から早希を守ろうとして重傷を負ってしまう。
鉄蔵がいなければ、製造ラインはストップし、納品できなくなってしまう。早希は責任を感じ、身重の体で工場に入り、追ってきた優子にたしなめられる。早希は鉄工所という家庭を守ろうと必死だった。
入院中の鉄蔵を見舞った優子。そこで鉄蔵から、知らなかった父・竜太郎の別の顔を知らされる。それは、阪神淡路大震災の時、三日三晩寝ずに人命救助に奔走し、それでも救えなかった命があったことに絶望し、泣きながら帰宅する姿だった。
チャランポランな父の姿しか知らなかった優子は衝撃を受け、ある決意をする。それは父・竜太郎の残した「俺は“尼ロック”」という言葉の意味を示すものだった…。
監督を務めた中村和宏が、構想から6年がかりで作り上げ、キャストも関西出身者にこだわったとあって、セリフ回しにわざとらしさが全くなく自然で、所々に挿入される阪神電車の風景が物語に味わいを加えている。
やや“変化球的”なハッピーエンドに終わるストーリーだが、「家族劇」という軸があるだけに、スンナリと受け入れられるものだった。