ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 「解決策は逃げるか殺されるか」映画『あんのこと』が浮き彫りにする“日本の病理”をノンフィクション作家・中村淳彦が徹底解説 » Page 5

「あんのこと」は命を救う作品

『あんのこと』6月7日(金)新宿武蔵野館、丸の内TOEI、池袋シネマ・ロサほか全国公開 配給:キノフィルムズ ©2023『あんのこと』製作委員会
©2023『あんのこと』製作委員会

 これだけでは終わらず、トドメを刺したのが正義感あふれる人物でマスコミ関係者だったことにも唸った。正義、正論が人を殺すという絶望が最後に描かれ、主人公だけでなく、観ている者ももうウンザリというところまで追いつめられる。支援者も、正義感あふれる人物も、制度のセーフティネットも、毒親によって苦境に陥るたった一人の女性を救うことができなかった。

 本作が教えてくれるのは家族から逃げる大切さ、そして誰も助けてくれる人はいないということ。膨大に存在する毒親に悩んでいる、追いつめられている人こそ観るべき映画だろう。「あなたの命を救う作品」だと言えるかもしれない。

(文・中村淳彦)

【作品情報】
出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子、早見あかり
監督・脚本:入江悠
製作:木下グループ 鈍牛倶楽部
制作プロダクション:コギトワークス
配給:キノフィルムズ
© 2023『あんのこと』製作委員会
上映時間:114 分
公式サイト

1 2 3 4 5 6
error: Content is protected !!