ポイント①ジャンプスケアを封印
前置きが長くなった。で、実際『あのコはだぁれ?』は怖いのか? と言われたら「怖い」。正直『ミンナのウタ』より怖い。しかし、この「怖い」がこれまでの清水監督作品とは少し違うのだ。
舞台は夏休み中の中学校。補習を受ける5人の生徒たちと、補習クラスと担当する臨時教師。彼らの目の前で1人の女子生徒が屋上から飛び降り、謎の死を遂げる。実は十数年前にも似たような事故が起こっていたことを知った彼らは、“いないはずの生徒=あのコ”の存在を知ることなる。だが“あのコ”は、彼らを逃れようのない運命へと導いていく。
本作で清水監督が“魅せた” これまでとは違うポイントは3つある。
まず1点目。ジャンプスケアを封印したといっていいほど、驚かしポイントがないのだ。『呪怨』で確立した、あらゆる場所から“伽椰子”がコンニチハしてくるアレ。ああいった演出がほぼない。その代わり、メイクや表情、動きでトコトン怖さを追求していく。
明かしても差し支えないと思うので明かしてしまうが、“あのコ”とは『ミンナのウタ』の“さや”である。単純に彼女の邪悪さが怖いのだ。
「アナタの(最後の)声を聞かせて」とテープレコーダーを首にぶら下げ、ユラユラと迫り来る様はシンプルに怖い。これまでも見た目にこだわった怖さはあったが、やはりさやを演じた穂紫朋子のエネルギー溢れる芝居は目を見張るモノがある。
怖い一方、“夏休み”は人生において儚い季節でもある。若い観客にとってはリアルで、大人にとってもノスタルジック。そんな舞台設定にはジャンプスケアは似合わない。猛暑でユラユラと陽炎の様に揺らめく恐ろしさ。これは、清水監督作品にはなかなか見られなかったものだ。