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岡田の真骨頂・”生々しさ”は諸刃の剣

映画『アリスとテレスのまぼろし工場』9月15日(金)全国公開 (c)新見伏製鐵保存会 配給:ワーナー・ブラザース映画 MAPPA
c新見伏製鐵保存会

また、(これは欠点とは言えないが)キャラクターや描写がかなり生々しいのも気になる。例えば、正宗の同級生の笹倉は、思春期の中学生らしく、「おっぱい」を連呼したりブルマ姿の女子に欲情したりする。また、作中には五実が正宗の涙を舐めたり、正宗が五実の排せつ物がたまったおまるを洗うシーンも出てくる。

極めつけは、睦実の義父の佐上衛のキャラクターだろう。周りの人間からも変人扱いされている佐上だが、あまりにもエキセントリックで作品から浮いてしまっている印象を受けた。こういった要素は、他の映画やアニメーションだとすんなりと受け入れられるのかもしれないが、本作のような美麗なアニメーション作品との相性はそれほど良くないように思える。

とはいえ、こういった登場人物の生々しさが、岡田磨里の持ち味である。言い換えると、こういった諸々の「欠点」が、そのまま「長所」に置き換わるのが岡田作品の特徴だ。岡田の作品は、すべからく過剰で、くどくて、それがとにかくエモいのだ。それは、岡田のこれまでの作品のタイトルの極端な長さを見てみてもわかるだろう。

では、岡田の作品はなぜここまで過剰なのか。その謎を紐解くには、岡田の生い立ちを振り返らなければならない。

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