桜田ひよりの真っ直ぐな演技がもたらすもの
清澄の人生をガラリと変えるのは、桜田ひより演じる潮だ。
清澄と同じマンションに住む潮は、好きなこともやりたいこともない女の子。しかし、そんな潮の心を初めて震わせたのが、清澄の作る音楽だった。彼氏に振られて傷心中の潮は、深夜に清澄の家のインターフォンを鳴らして「音楽を聴かせてほしい」とお願いしたり、清澄の部屋の窓ガラスを割っていきなり登場したりと、かなり破天荒な行動を繰り返す。
本作は同名漫画が原作なのだが、原作者のむつき潤氏が「潮は漫画という媒体の影響が最も色濃いキャラクター」と語っていたように、漫画だからこそ潮の破天荒さが許されるのであって、現実世界でもし他人の家の窓ガラスをフライパンで割って、「海見に行こ!」なんて誘ったら普通に怖がられるし通報されるだろう。
しかし、漫画ではなく現実世界が舞台である実写映画の本作を見ていても、「まあ、そういうこともあるかもしれないな…?」と、なぜか潮の行動に納得すらしてしまう。その後も潮はグイグイと清澄に関わっていくのだが、一貫して「ちょっと強引だけど、清澄を変えてくれる女の子」として潮を見続けていられた。
それは、演じる桜田があまりにも可愛すぎるのと、「こういう女の子いるかも?」と思わせるほどの、まっすぐでひたむきな演技のおかげではないだろうか。原作者であるむつき潤氏も「僕の知らなかった潮を知り、もっと潮を好きになった」と語っているほど、桜田の演じる潮はすごく魅力的だった。