「チャチャ」というキャラクターの魅力
本作の魅力はなんと言っても主人公・チャチャのキャラクターだろう。
個性的な服装に、ふわふわとした歩き方、オフィスだろうが関係なく顔を絵の具でカラフルに汚しながら絵を描く…自分らしく好きなように生きるチャチャの姿は、精力的に個展を開くアーティスト・伊藤万理華自身の姿とも重なる。
重なるからこそ、常に地面から少し浮いているような、非現実的な“チャチャ”というキャラクターを、ギリギリの実在感を保ちながら体現できたのだろう。
しかし、そんなチャチャは“ただの浮世離れした天然ちゃん”とは描かれていない。自分に向けられるいじわるな視線や陰口にも実は気づいている。
それを象徴するのがオープニングで、デザイン事務所の同僚によるチャチャへの陰口をしばらく観客に聞かせたあと、カレーパンを齧るチャチャの「聞こえてるんだが」というモノローグと画面にタイトルロゴが映されて、音楽が流れ出す。
この一枚上手感が、チャチャの「天然ではあるが俯瞰で自分を見れている人物」であることを見事に表現していて、そんな強いチャチャに観客は一気に引き寄せられる。
そもそも好きな服を着ていて自由に生きるのは当たり前の姿であって、自分らしく生きているだけで“不思議系”だの“天然”だのと言われるのがちゃんちゃらおかしいのだ。だからこそ、天然不思議系キャラでありつつ、そんな自分を客観視もできているチャチャという主人公に観客は魅了される。