感動モノではあるが過剰にウェットではない
大泉は自身が演じた宣政(1941年生まれ)の世代について、生きるために悩んでいる余裕がなかった世代と評している。一方、視点を令和に移すと、選択肢の多さゆえにかえって生き辛さを感じる人も多い。
そんな現代を生きる我々観客の目に、“為せば成る”を信条に猪突猛進していくキャラクターは、一歩間違えればはた迷惑な存在として映りかねない。しかし、娘の命を助けるために経験ゼロから医療器具を開発するといった偉業は、こういうキャラクターだからこそ成し得たのだ。
また、猪突猛進型のキャラクターを主人公に据える場合、一歩間違えると物語のバランスは破綻しかねない。しかし、受けの芝居が抜群に巧い菅野美穂を妻&母親役に配し、3人の娘に川栄李奈、福本莉子、新井美羽という芸達者をキャスティングすることで、大泉洋の勢いのある芝居を時には受け止め、時には巧くいなして、エモーションのバランスを絶妙に保っている。つまるところ、本作は感動モノではあるが、過剰にウェットではないのだ。