馬琴が虚の世界に込めた想い
『八犬伝』のストーリーが進むに従って、馬琴と北斎はともに歳をとっていく。しかし、根本的な価値観は変わらない。
「正しいものが勝ち、悪は罰せられる。そういう世界を描く目的で戯作を書いているんだ」
一貫して勧善懲悪を描く馬琴のセリフに対して「この世はそう上手くいくかね?」と疑問を投げかける北斎に、すかさず「いかんから物語として書くんだ」と返す。
苦しい現実を乗り越えるために、そして同じように辛い日々を送る人々のために、失明して文字を書けなくなってもなお、執念で完成まで漕ぎつけた『南総里見八犬伝』。
理想と現実の狭間で揺れうごく現代の人々にとっても、馬琴の執念とも呼ぶべき願いが宿る『八犬伝』の世界は、空想の物語が現実にもたらす希望の意義を投げかけてくれるはずだ。
(文・ばやし)
【作品概要】
監督:曽利文彦
脚本:曽利文彦
原作:山田風太郎
出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久創、藤岡真威人、上杉柊平、栗山千明、中村獅童、尾上右近、磯村勇斗、大貫勇輔、立川談春、黒木華、寺島しのぶ
配給:キノフィルムズ
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