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沈黙という名の究極の愛ー脚本の魅力

第63回カンヌ国際映画祭に映画『アウトレイジ』を出品
第63回カンヌ国際映画祭に映画アウトレイジを出品Getty Images

あらすじからも分かる通り、本作は主に二つの対照的な物語を主軸に構成される。死へと突き進む西の物語と、死から生還し前を向いて生きようとする堀部の物語だ。

入院中の妻を見舞う西の代わりに張り込みを担当して重傷を負し、子供や妻に逃げられてしまった堀部。そんな彼に、西は、自分のたった一つの行動で堀部の人生をめちゃくちゃにしてしまったという罪悪感から、経済的な援助を続ける。

西の重い愛は、妻の美幸にも向けられる。重いガンを患い、余命いくばくもない美幸。西は、そんな美幸に最後くらいはいい思いを見させてやりたいと、死出の旅に赴く。ラストの銃声は、美幸を楽に死なせてやりたいという思いからくる西自身の愛だ。

本作では、この西の不器用な愛が、「沈黙」という言葉で表現されている。作中、西はほとんど会話をせず、ただただ苦痛に耐えるかのように黙している。この演出には、「究極の愛とは、愛する者同士ただ寄り添うことである」という北野の愛に対する考え方がはっきりと見られる。

なお、西と同様、美幸もほとんど会話を交わさない。だからこそ、西に対する感謝や贖罪など、あらゆる思いが詰まったラストのセリフが際立つのだ。

「ありがとう、ごめんね。」

実はこのセリフ、英語の字幕では「Thank you for everything」と表示される。これは、子供の死や自身の病といった苦難も含め、西との間に起きた出来事全てを肯定するという意味が込められている。西と美幸はお互い会話を交わさないものの、心の底でどこまでも通じ合っていたのだ。

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