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朝の作詞によるロックンロールナンバーが提示するもの

『違国日記』
Ⓒ2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

 朝の作詞によるロックンロールナンバーが、昼休みの校内で披露される。いつもの知らないニュースだ/いつもの知らない天気予報だ/いつもの知らない献立だ/いつもの知らない時間だ、と押韻しながら進行していく彼女の詞は、絶望と孤独から身を引き剥がそうとする意志に満ちている。続いてサビ部分で――

   おやすみなさい あしたよ待ってて
   未来を前借りさせた声に寄せて運びたい
   ほどけないエコーだ
   からだじゅうを駆けめぐる
   この手にあるすべては 私だけが知るものだろう

 上記の歌詞は、ヤマシタトモコ漫画を端的に表したものとして提示されつつ、また同時に時/空間をかなり乱暴にストップ&ゴー、イキツモドリツばらばらに粉砕し、拾い上げてはまたそのかけらを散開させてきた瀬田なつきの映画的道程でもあった。

 ことに「未来を前借りさせた声に寄せて運びたい ほどけないエコー」などというフレーズは、まさに瀬田なつき映画そのものである。この初夏、ヤマシタトモコ/瀬田なつきの創造的コアビタシオンを、心ゆくまで味わい尽くして過ごしたい。

(文:荻野洋一)

6月7日(金)より全国公開中

【作品情報】
タイトル:『違国日記』
出演:新垣結衣 早瀬憩
夏帆 小宮山莉渚 中村優子 伊礼姫奈 滝澤エリカ 染谷将太 銀粉蝶 瀬戸康史
監督・脚本:瀬田なつき(『PARKS パークス』、『ジオラマボーイ・パノラマガール』)
原作:ヤマシタトモコ「違国日記」 (祥伝社 FEEL COMICS)
音楽:高木正勝 劇中歌:「あさのうた」(作詞・作曲:橋本絵莉子)
製作:太田和宏 小山洋平 桑原佳子 奥村景二
プロデューサー:西ヶ谷寿一 西宮由貴 共同プロデューサー:西田佑子
ラインプロデューサー:飯塚信弘 深津智男
企画:橋本匠子 撮影:四宮秀俊 照明:永田ひでのり 美術:安宅紀史 田中直純
録音:高田伸也 衣裳:纐纈春樹
ヘアメイク:新井はるか 音楽プロデューサー:北原京子
音響効果:岡瀬晶彦 助監督:久保朝洋 制作担当:桑原 学
企画・制作: 東京テアトル 制作協力:ジャンゴフィルム
製作委員会:東京テアトル、MaP、VAP、日販
配給:東京テアトル ショウゲート
Ⓒ2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会
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