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ワンシーンで表現する作者に脱帽

©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
©芥見下々集英社呪術廻戦製作委員会

思い出の人が自分のことをふと語っている際に、時を同じくして、本人が死んでしまうなんて、なかなか思い浮かばない物語である。

また、「田舎暮らし」を甘く見ている人たちへの注意喚起とも言えるメッセージが込めれているとも考えられる。「村社会」とは、息苦しい部分も多々あるものだと。

フミの家へ近所の老婆が赤飯を持って来ることに対して、フミは違和感を感じていたというシーンが一瞬ある。その理由を推測すると、昔はいわゆる「女性の日」が始まったことを親が「赤飯」を炊いて祝うという風習があったことだろう。

おそらく親にしか言っていなかったそのことを、なぜ近所の老婆が知っているということ。さらに、わざわざ赤飯を炊いてきたという、ありがた迷惑行為に、得も知れぬ嫌悪感と恐怖を感じたのではないだろうか。

作者氏には、いつか、そんな村で暮らした釘崎野薔薇、沙織、フミを中心としたスピンオフ作品を、描いていだだきたい次第だ。

この二話を総括すると、七海は「未来」、釘崎は「過去」が死の間際、頭によぎったという対比も、各々のキャラクター像を考える上で実に興味深い流れとなっている。

第44話では、呪術高専京都校3年生・1級呪術師の東堂葵、1年生の新田新が援軍として、駆けつけ、東堂は虎杖と共闘し、真人と対決。

反転術式の使い手である新は、息絶えた釘崎に対し、術を施し「助かる可能性はゼロではない」との意味深なセリフを残す。が、原作でも未だ復活の見込みが感じられない釘崎の存在にファンたちは悶々とした日々を送っている。

また、余談だが、「渋谷事変編」の非情で冷酷な世界観をグッと引き締める榊原良子氏によるナレーションは、『HUNTER×HUNTER』における「キメラアント編」を参考にしていると思われる。

最後に言及したいことは、原作未読の方でも、前述した釘崎野薔薇のエピソードをきっかけとして、この物語の沼にハマる入口になるのではないだろうかと、お薦めする次第だ。

(文・ZAKKY)

【作品情報】
原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:御所園翔太
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、中村悠一、櫻井孝宏、遠藤 綾、永瀬アンナ、子安武人
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史・小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東 潤一
色彩設計:松島英子
CGI プロデューサー:淡輪雄介
3DCG ディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳 圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
発売・販売元:東宝
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト
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