ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 大画面で映える…亀梨和也の演技はどこが凄い? 映画『怪物の木こり』徹底考察&評価。三池崇史最新作を忖度なしガチレビュー » Page 3

スクリーンならではの亀梨の芝居

亀梨和也【Getty Images】
亀梨和也Getty Images

 

今作で演じた二宮役で、特に印象に残っているのが亀梨の瞳の演技だ。

瞳の動きに目を奪われたのはもちろん、大きく見開いた目に吸い寄せられるようにして、二宮の気持ち、胸の内を推しはかろうとするも、掴めそうで掴めない場面が多々。サイコパスならではの“掴めなさ”に翻弄された。

そしてもうひとつ、あるシーンで二宮が奥歯にグッと力を入れ、噛みしめるような表情を見せた。当然ながらそこにセリフはないのだが、わずかに頬がくぼむ、その動きから二宮の感情が伝わってきた。

そうした細やかな芝居はいまに始まったことではない。本作で演じた弁護士役で例えば、NHKドラマ『正義の天秤』(2021)シリーズでも、元医師の天才弁護士・鷹野和也役を演じた。同じ弁護士役であっても、クレバーな様子はそのままに、役の性格や心情をすくいとって演じ分けている。

特に本作ではサイコパスという要素が加わっており、「殺気」を放つ際の独特の鋭さやミステリアスな雰囲気を表情に加えて、佇まいからも説得力をもたらしてきた。役作りにはじまり、わずかな表情からも心を揺さぶられた。

先の読めないストーリー展開もさることながら、二宮という人物を大げさでも控えめでもなく、難しい役を正面から捉えた様子で、“最狂のサイコパス”をしっかりと演じる亀梨の演技にも注目してほしいと思う。

「サイコパス」「猟奇殺人」というワードが並ぶが、それに違わぬ刺激的なシーンが描かれつつも、PG12指定だけに幅広い年齢層が観られる配慮がある。前半と終盤のコントラストが面白く、事件やそれぞれの“狂気”的な人間模様、ラストには“情”の部分も巧に描かれ、想像のつかない結末を迎える。お世辞抜きにお勧めしたい作品だ。

(文・柚月裕実)

【作品情報】

『怪物の木こり』
出演:亀梨和也、菜々緒、吉岡里帆、柚希礼音、みのすけ、堀部圭亮、渋川清彦、染谷将太、中村獅童
原作:倉井眉介『怪物の木こり』(宝島社文庫・刊)
監督:三池崇史
脚本:小岩井宏悦
音楽:遠藤浩二
製作幹事・配給:ワーナー・ブラザース映画
©2023「怪物の木こり」製作委員会
公式サイト

1 2 3 4
error: Content is protected !!