ファーストサマーウイカの捨て身の芝居に注目

ここまで本作のツッコミどころに忌憚なく言及してきたが、一旦箸を休めて、キャスト陣の演技について見ていこう。

映画『銀魂』(2017)で、彼女のビジュアルからは想像できないような変顔を披露したことが記憶に新しい女優・橋本環奈。彼女はその経験を活かし、本作では怪奇現象に戦慄する場面でワンパターンではなく、多様なリアクションを見せ、大健闘している。

橋本の熱演もさることながら、本作のMVPとして挙げられるは、間違いなく美雪役のファーストサマーウイカだろう。事前情報を一切入れずに見たならば、彼女の出演に気が付く人はほとんどいないのではないだろうか。

ウイカ演じる母・美雪の登場シーンはかなり短いが、母親として家族と接する少ない時間を、儚い表情で巧みに表現している。さらに、幽霊に化けてからは、笑顔が張り付いたような違和感のある顔が観客の不安を煽ることに成功している。

生身の人間から幽霊に変化していく過程はもちろん、怨霊としての異様な佇まいや、理屈を越えたアクションが素晴らしい。繰り返そう。本作のMVPは誰がなんと言おうとファーストサマーウイカだ。