『ゴジラ』を超える反戦映画? 大人が夢中になるワケ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』考察&評価。忖度なしガチレビュー
text by 司馬宙
『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』など、数々の人気漫画を世に送り出してきた妖怪漫画家、水木しげる。そんな水木の生誕100周年記念作品が現在公開中だ。その名も『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。鬼太郎の前日譚を描いた本作は面白い?つまらない?忖度なしでレビューする。(文・司馬宙)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー>
人間の闇を描いたシリーズ第6期の集大成
鬼太郎の誕生に迫る“エピソードゼロ”
漫画家水木しげるが生み出した“正義のヒーロー”ゲゲゲの鬼太郎。紙芝居漫画から生まれたこのキャラクターは、6度にわたりアニメ化され、世の子どもたちの心をつかんできた。
しかし、実のところ、『ゲゲゲの鬼太郎』には、お世辞にも「子ども向けバトル漫画」とは言い難い要素が含まれている。例えば、原作に登場する鬼太郎は、ねずみ男とあくどい金儲けを企んだり、ハニートラップに引っかかったりと、実に「人間臭い」存在として描かれている。
これはアニメも例外ではない。例えば、水木しげるの短編漫画を原作とした回が多いアニメシリーズ第2期(1971年~1972年)には、現代社会を批判したエピソードが多く、高度経済成長期真っ只中の日本に警鐘を鳴らすような人間の業をテーマとした大人向けなエピソードが多く散見される。
そしてこの路線は、アニメ化50周年記念作品として制作されたシリーズ第6期(2018年~2020年)に引き継がれることになる。“歴代最恐”との呼び声が高い本シリーズでは、従来のエピソードを現代風にアレンジし、SNSやブラック企業、整形手術といった“人間の闇”を描写してきた。
水木しげるの生誕100周年記念作品である『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、そんな“人間の闇”を描いた第6期の集大成となる作品であるとともに、鬼太郎が一体どのような生い立ちを辿ったのか、その秘密が描かれた作品になっている。