ゲゲゲの鬼太郎×横溝正史×村ホラー
本作の直接の原作となるのは、『ゲゲゲの鬼太郎』の前日譚となる『墓場鬼太郎』だ。
貸本漫画として作られた本作は、幽霊族の生き残りである父と母から生まれた鬼太郎が墓場でサラリーマンの水木に拾われる顛末が描かれている。しかし、本作『鬼太郎誕生』では、この流れが大胆に翻案され、鬼太郎誕生以前の鬼太郎の父と水木との知られざる絆が描かれる。
本作の前半の主軸となるのは、日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族をめぐる横溝正史ばりの本格ミステリーだ。血液銀行に勤める兵隊上がりのサラリーマン水木は、得意先の龍賀製薬の社長、龍賀時貞の死に伴い、龍賀一族が支配する哭倉村へと向かう。しかし、そこでは、龍賀一族の醜い争いが始まっており、一人、また一人と、候補者が惨殺されていく。
そして、鬼太郎の父が村を訪れて以降は、ここに「村ホラー」のテイストがプラスされる。鍵を握るのは、龍賀製薬が製造していたとされる血液製剤“M”と一族の正体、そして島の湖の中心にある「禁忌の島」だ。水木と鬼太郎の父は、村に隠された秘密を暴くため、「禁忌の島」へ乗り込むことを決意する。
横溝正史ミステリーと村ホラー、そして鬼太郎固有のダークな世界観―。本作では、この3つの世界観が見事に調和し、たたみかけるようなテンポで進んでいく。そのため、観客を全く飽きさせないのだ。