全然ホラーじゃない! なのに超コワい…その理由は? 映画『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』徹底考察。忖度なしガチレビュー
映画『ノロイ』や『オカルト』などを監督し、Jホラー界で独自の立ち位置を築いてきた白石晃士。白石はこの度、2012年にオリジナルビデオとして発表されて以来人気を集め、最終的には劇場でも公開された「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズの8年ぶりの最新作を発表。本稿では、ファン待望の本作のレビューをお届けする。(文・司馬 宙)
白石晃士の超人気ホラーシリーズ
「幽霊よりも恐ろしい」登場人物が話題に
本作の紹介の前に、まずは「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズについて触れなければならない。
本シリーズは、白石が2012年から制作してきたフェイクドキュメンタリー・シリーズで、映像制作会社のディレクターの工藤仁(大迫茂生)とアシスタントディレクターの市川実穂(久保山智夏)、そしてカメラマンの田代正嗣(白石晃士)の3人が、視聴者から送られてきた怪奇映像をもとに、口裂け女やトイレの花子さんといった日本の怪奇現象に挑むというストーリーになっている。
「超コワすぎ!」を含めるとオリジナルビデオ8本、劇場版1本が作られてきた本作だが、その名前と反して、厳密にはホラーとは言い難い作風に仕上がっている。
その理由としては、本作の登場人物があまりにもぶっ飛んでいることによるところが大きいだろう。
例えば、本シリーズの「狂言回し」ともいえるディレクターの工藤は、昔堅気のテレビマンよろしく、パワハラ・セクハラなんでもありの「クズ人間」。
怪奇現象への思い入れなども特になく、口を開けば「この映像は売れるぞ!」の一言が飛び出し、幽霊や妖怪を金属バットで殴ったり、鉄拳を食らわせたりと、ときに物理的に対応する。
そして、アシスタントディレクターとして工藤のストッパー的な役割を果たしている市川も、単身心霊スポットに行かされたり、時に怪異に取りつかれたりと、散々な目に遭いながらも、徐々にたくましくなっていく。
そして最終的には、「幽霊よりも恐ろしい」工藤に口答えをするようになっていく。
つまり本シリーズは、ホラー映画として怖がることを目的とした作品である以前に、工藤や市川をはじめとする登場人物のドタバタや、登場する怪異の荒唐無稽さを楽しむ作品なのだ。
そして、こういった本シリーズならではの面白さは、最新作である本作『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』にもしっかりと反映されている。