ドキュメンタリータッチで表現する
「異界」の表現

そして、本シリーズの重要な設定である「異界」の描写にも注目だ。

白石によれば、「異界」とは、「あの世とこの世の境界」であり、閉じ込められた人はこの世にもあの世にも行けない塗炭の苦しみを味わうとされている。

先述の『戦慄怪奇ファイル　コワすぎ！　史上最恐の劇場版』では、工藤が亡き両親と出会う場として登場したこの「異界」だが、本作では凄腕霊能者の珠緒（桑名里瑛）の導きのもと、現在、過去と時空を何度も超越し、怪奇現象に立ち向かう。

CGがいささかチープであるとはいえ、フェイクドキュメンタリーという設定のもと、現在と過去が同じ画面上に共在する描写はなんとも奇妙で斬新だ。

とはいえ、この「異界」の描写が鑑賞をする上で大きな問題を生んでいることもまた確かだろう。

本作では、現実世界と異界を行き来するため、映る景色が分刻みでコロコロと変わっていく。

しかも、カメラマンである田代も、これでもかとばかりにハンディカメラをぶん回している。つまり、本作は、「コワすぎ！」史上最も「酔う」作品なのだ。

現に、筆者は徐々にこみ上げる吐き気とめまいが抑えきれず、終盤で一度中座した。三半規管に自信が無い方は、あらかじめ映画館の後ろの席を予約しておくといいかもしれない。

（文・司馬 宙）