「身代わり忠臣蔵」計画という一世一代の大芝居
上野介には孝証(ムロツヨシ=上野介・孝証2役)という弟がいた。武家に生まれたとしても、長男以外は跡取りにはなれず、親の威光や財産を受け継ぐことは出来ない。孝証も出家し、僧侶となっていたものの、寺に属しているわけでもなく、法話をしながら物乞いをするような貧しく荒んだ生活ぶりで、兄に度々、金の無心をしていたため、吉良邸からも“出入り禁止”となっていた。
そんな孝証が、ある日、川で溺れているところを、釣りをしていた内蔵助(永山瑛太)に助けられる。この邂逅が、物語のスタートとなる。
重体の上野介を前に、吉良家家臣・斎藤宮内(林遣都)のアイデアで、そっくりな弟・孝証を身代わりにして綱吉の側近にして幕府側用人の柳沢吉保(柄本明)を騙し、お家取り潰しを免れようとする前代未聞の作戦を実行に移す。
一方、切腹した長矩の側近だった内蔵助は、浪士となった仲間たちからプレッシャーを受け、仇討ちをするべきか思案しながらも、幕府への嘆願書を書き続ける日々を送っていた。
そんな中、上野介は死んでしまう。そして、嘆願書の甲斐もなく赤穂藩の取り潰しは覆らず、赤穂藩の旧藩士である、いわゆる「赤穂四十七士」が仇討ちのために立ち上がる。
孝証は仇討ちの情報を耳にし、また、同時にその情報を知った幕府は、吉良邸の本所への転居を命じる。何とか仇討ちやお家取り潰しを回避したい孝証。片や、暴走寸前の赤穂浪士の気持ちを鎮めたい内蔵助…。2人の心情が、いつしか同じ方向に向かう。
ある日、孝証は大金を手に、吉原の遊郭に遊びに行く。隣の部屋で派手に遊んでいたのは、“敵”である内蔵助だった。孝証は僧侶を装っており、再会した内蔵助に、かつて命を救ってもらったお礼を告げ、意気投合し朝まで飲み明かす。
孝証は内蔵助に対して、自らの正体を明かし、一世一代の大芝居を提案する。これこそがタイトル通り「身代わり忠臣蔵」計画の始まりだ。