原作とは職業が違うハンス
「美こそ至上」の世界観にマッチ
では、どこが解りにくいのか。多少のネタバレを含みつつ具体的に挙げていきたい。
まず、かぼちゃの馬車で弾き殺したと思えた男は、実はすでに死んでいたカリスマ美容師のハンスという人物であった。この物語は、彼を殺した意外な人物を、赤ずきんが解き明かすストーリーとなっている。
ハンスは「この国では、私が手がけた髪以外に美しいものが存在しては、いけないのだ」という狂った信念を持ち、自身が嫉妬するくらいの美しい髪を持つ者をおびき出し、髪の毛を無理くりにショートカットに切ってしまうサイコパス。
このハンスは、原作では、「炭焼き職人」というキャラクターであるのだが、上記のような「美」に狂った美容師へのキャラ変は、「美」こそが正義であるという本作の世界観を表現する上で正解だったと、ひとまず言えるだろう。
ただし、「美しい髪を中途半端に切る」という行為のみで、殺人にまでいたらないのは、なんだか、悪役として中途半端極まりないのではなかろうか。
正直、ヒール(悪役)に成り切れていないヒール感があり、こいつが真の悪者なのかどうかが、いまいち伝わってこないのだ。