事件の真相は? 原作とどこが違う? 映画『羅生門』徹底考察。黒澤明の名作、テーマと伝えたいこととは? 珠玉の音楽も解説
text by 編集部
映画史を代表する永遠の巨匠、黒澤明。その初期代表作『羅生門』のネタバレあらすじに加え、演出、脚本、配役、映像、音楽の視点で徹底解説。原作である芥川龍之介の「羅生門」と「藪の中」との違いとは? 伝えたいことは? テーマと登場人物の真意は? 多角的な視点から明らかにする。【あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー】
『羅生門』あらすじ
時は平安時代の京都。3人の男が羅生門で雨宿りしていた。そのうち、杣売り(そまうり)の男と旅法師の男は、ある事件の参考人として出頭した検非違使(けびいし)からの帰りであった。
2人の男は雨宿りの最中、奇妙な話をもう一人の下人に語り始めた。
数日前、薪取りに山に入った杣売りは、武士の金沢が死んでいるのを見つけ、検非違使に報告した。そして今日がその取り調べの日であった。
杣売りは死体を発見した時のことを思い出し、市女笠(いちめがさ)と踏みつけられた侍烏帽子、切られた縄、赤色のお守りが落ちており、反対にそばにあるはずの武士の太刀と、女性用の短刀は見当たらなかったことを証言した。
旅法師は、道中に武士と会っており、武士が妻の真砂と一緒に行動していたのを見ていた。
まず、武士を殺した犯人である盗賊の多襄丸が連行されてくると、多襄丸は、山で真砂を見て欲情し、夫である金沢を縛り、真砂を強姦したことを語った。
その後、何食わぬ顔をした真砂が、金沢と多襄丸が戦い、勝利した方の妻になることを提案したことから、多襄丸は金沢を倒した。しかし、その間に真砂は逃げており、短刀がどこにあるのかも知らないと証言するのだが…。