『羅生門』【ネタバレあり】あらすじ
次の真砂の証言はというと、強姦された後、多襄丸は金沢を殺さずに逃げたという。真砂は夫を助けようとしたが、神沢は目の前で別の男を受け入れていた妻に軽蔑の眼差しを向けた。
そんな夫の態度に耐えられなくなった真砂は、自分を殺してほしいと頼んだが、そのまま気絶してしまった。次に真砂が目を覚ますと、夫は短刀が刺さって死んでおり、自分も死のうとしたが死ねなかった…。と語った。
悲しみに暮れる真砂と、多襄丸の証言は大きくかけ離れていたため、最後には巫女が呼ばれ、金沢の霊を呼び出して証言を得ることになる。
最後に金沢の霊は、次のように証言した。多襄丸と関係を持った真砂が彼に愛情を持ち、一緒に行く代わりに夫を殺すようにと頼んだ。
しかし、その真砂の気の変わりように呆れた多襄丸は、真砂を生かすか殺すかどうかを金沢に聞いた。それを聞いた真砂は逃げ出し、多襄丸も姿を消す。
一人残された金沢は悔しくてたまらなくなり、真砂の短刀を使って自殺したのであった。その後、何者かが現れ、死んだ自分の体から短刀を抜いたのだと言う。
こうしてそれぞれすれ違う3人の証言を話し終えた杣売りは、下人に実はこの3人全員が嘘をついていることを教えた。
実は杣売りは事件の一部始終を目撃しており、巻き込まれることを懸念して黙っていたという。杣売りは真実を話し出す。
多襄丸は真砂を強姦した後、勝手に惚れこみ、夫婦になることを懇願した。しかし真砂はその申し出を断り金沢の縄を解いた。ところが金沢は辱めを受けた妻に対して、自害するように迫ったのだった。
真砂は勝手な言い分を押し付けてくる男たちを非難し、2人の男を殺し合わせた。意気地の無い2人は無様に斬り合い、どうにか多襄丸が勝利するが、真砂は自らが招いた結果に動揺して逃げ出してしまう。多襄丸も、人を殺したショックでその場を動くことはできなかった。
3人の証言はそれぞれ自分のプライドを守るための嘘であり、情けない真実を知った旅法師は憐れんだ。
すると、羅生門の一角から赤ん坊の泣き声が聞こえ、3人は声のする方に向かう。下人は赤子に手を伸ばすと、着物を剥ぎ取り、赤子はそのまま放置してしまった。
それを見た杣売りは下人を非難するが、下人は「この世で生き残るためには非情な選択も必要だ」と自論を説き、さらに金沢に刺さっていた短刀を持ち去ったのが杣売りであることを暴露すると、その場を去る。
旅法師は思わぬ事態に絶望する。その後、杣売りが赤子に手を伸ばすのを見た旅法師は、赤子の肌着まで奪うのかと思い、その手を払いのけた。
しかし、旅法師の考えたこととは裏腹に、杣売りは赤子を自分の子として育てると言うと、去っていった。旅法師は疑ってしまった自分を恥じながらも、人間の良心に希望を感じるのであった。