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日本映画の凄さを知らしめた永遠の名作―演出の魅力

監督の三船敏郎【Getty Imags】
監督の黒澤明Getty images

世界の映画界を代表する伝説の巨匠、黒澤明。その凄さを世界に知らしめた作品が、この『羅生門』だ。

原作は芥川龍之介の短編『羅生門』と『藪の中』で、ストーリー自体は『藪の中』がメイン。キャストには三船敏郎を筆頭に、京マチ子、志村喬、千秋実と黒澤組の常連たちが名を連ねる。

本作の見どころは、なんといっても一つの出来事が複数人の証言から描かれるという物語構造にある。この構造は、本作をきっかけに物語構造として確立され、「羅生門効果(Rashomon effect)」として社会科学の用語にもその名をとどめている。

加えて、三船をはじめとする役者たちの野性味あふれる演技や、光と影のコントラストを意識した映像美、そして太陽に直接カメラを向けるというタブーへの挑戦など、当時としては斬新な演出が全編に渡って散見される点も本作を傑作たらしめている一つの要因だろう。

そして、脚本の共同執筆者である橋本忍も忘れてはならない。『隠し砦の三悪人』(1958)や『悪い奴ほどよく眠る』(1960)など、黒澤作品には欠かせない橋本だが、なんと本作が脚本家としてのデビュー作。

脚本の原題は『雌雄』で、『藪の中』をモデルに橋本が執筆した脚本を黒澤が『羅生門』のエッセンスを加える形で大幅に加筆修正し、長編作品に仕上げたという。

また、本作は、アカデミー賞で名誉賞(国際長編映画賞)を、さらに、ヴェネツィア国際映画祭ではエリア・カザンやジャン・ルノワールといった名だたる巨匠を押さえ最高賞の金獅子賞を受賞。国際映画祭での最高賞受賞は史上初の出来事であり、湯川秀樹のノーベル物理学賞受賞や古橋廣之進の競泳世界記録樹立などとともに、日本の戦後の希望復興のシンボルとなった。

なお、本作以降、大映は衣笠貞之助監督の『地獄門』(1953)や『雨月物語』(1953)など、海外向けの映画を連発。それまで世界的な評価が低かった日本映画が、一躍国際市場に進出していくことになる。

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