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時代劇俳優・山口馬木也の魅力

侍タイムスリッパー

©2024 未来映画社

 高坂を演じる山口も、他の時代劇俳優たちと同じように初心者から殺陣の稽古を始めた。

 東映の撮影で殺陣の経験がある者ならば、誰もが現場で峰に教わった経験があるはずだ。山口は以前、イベント出演のために峰からしっかり習った経験があり、ふたりは本当の師弟のようなものである。本編で峰演じる関本と稽古をする高坂の姿は、実際に近いだろう。そしてまさに撮影場所は、数々のスターが文字通り血と汗を流してきた東映京都の本物の道場だ。

 山口は今回が映画の初主演ではあるが、時代劇ファンにはお馴染みのベテラン俳優だ。1973年生まれの現在51歳で、1998年のデビュー後すぐに、山本周五郎原作の時代劇映画『雨上がる』(2000)の撮影に入った。そして1999〜2000年のNHK金曜時代劇『スキッと一心太助』に出演。続いて2001年の大河ドラマ『北条時宗』(NHK総合)にも出ている。

 とりわけ有名なのは、藤田まこと主演『剣客商売』(2003年、フジテレビ系)の主人公・秋山小兵衛の息子、秋山大治郎役だ。さらに同年、テレビ時代劇『水戸黄門』(TBS系)には準レギュラーで登場。5代目・水戸光圀に里見浩太朗を据えてスタートを切った第31部から、ミステリアスなポニーテイル姿の甲賀忍者・鳴神の夜叉王丸として作品に花を添えた。

 山口の夜叉王丸は、登場回数こそ多くはないものの、強烈な印象を残した。第32部から登場する原田龍二&合田雅吏の“助さん格さん”コンビと、照英が演じる風の鬼若とともに、美しくフレッシュな布陣で長寿番組のイメージを更新。若いファンを呼び込んだ。

 なんといっても『水戸黄門』は日本を代表するファミリー時代劇だ。ここに準レギュラーで入るというのは強運の神に選ばれし者である。

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