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原作との違いは…? 根底にあるテーマとは? 映画『正欲』徹底考察&評価。「普通」から外れた人々を描く衝撃作を解説

text by 編集部

直木賞作家・朝井リョウのベストセラー小説を稲垣吾郎、新垣結衣、磯村隼人、佐藤寛太、東尾絢香という豪華キャストで実写化した映画『正欲』が11月10日(金)より公開中だ。今回は、第36回東京国際映画祭コンペティション部門の観客賞&最優秀監督賞をW受賞した話題作の忖度なしガチレビューをお届けする。【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

傑作か?問題作か?
議論を引き起こすこと間違いなしの意欲作

©2021 朝井リョウ/新潮社 ©2023 「正欲」製作委員会
©2021 朝井リョウ新潮社 ©2023 正欲製作委員会

本作は、『あゝ、荒野』(2017)、『前科者』(2022)の岸善幸監督がメガホンをとり、『桐島、部活やめるってよ』(2009)でデビューを果たし、『何者』(2013)で直木賞を受賞した朝井リョウの同名小説を原作の実写作品。5名の男女を中心に物語は展開する。

不登校中の息子を持つ検事の寺井啓喜(稲垣吾郎)。広島のショッピングモールで販売員をしている桐生夏月(新垣結衣)。広島に戻ってきた夏月の中学の同級生・佐々木佳道(磯村隼人)。ダンスサークルに所属し、学園祭のミスターコンテストで準ミスターに選ばれた諸橋大也(佐藤寛太)。学園祭の実行委員であり、陰ながら大也のことを気にする神戸八重子(東尾絢香)。

5名の人生は少しずつ交差し、最終的にある事件に発展してしまう…。

原作では起きた事件の報道内容が冒頭に描かれ、来たるべき事件に向かって、なぜそのような事態に陥ってしまったのか、その詳細を描いているが、本作では逆のアプローチを取っている。

本作は、特殊な性的嗜好=フェチシズムを扱った作品であり、終盤に起きてしまった事件に対して、特に社会正義として客観的にジャッジすることの難しさが如実に描かれる。

とはいえ、性的嗜好にフォーカスしているものの、単純に性欲について限定されるべき話ではない。人と、社会と、繋がることが出来ずに苦しむ人間の物語である。

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