クセの強い候補者にも一生懸命付き合う
取材対象は、政党の推薦を受けた候補者のみならず、いわゆる“泡沫候補”とよばれる一匹狼の候補者にも及び、丹念にその政治信条や公約を聞き出していく。そこには一切の偏見はない。
そんな候補者たちはクセの強い人物ばかりだ。「炭を全国でつくる党」「バレエ大好き党」「議席を減らします党」、意味不明な“トップガン政治”を声高に唱える候補者、自らを“超能力者”と自任し、バッティングセンターで「170キロの球も打てる」と、うそぶく候補者…。
大手マスコミからは全く相手にされない候補者に対しても、畠山は話に耳を傾けるのだ。供託金300万円をドブに捨てる覚悟で出馬した候補者に尊敬の念すら抱いているようにも感じる。
実際、畠山は“泡沫候補”をいう言葉を嫌う。著書のタイトルにもなった「無頼系独立候補」という呼称には、そうした候補者たちへの敬意が込められている。
そんな畠山の妻は、夫を「会社に入って働けるような人ではない」と評する。
一方で、収入を度外視し、好きな仕事を続ける夫を認め、ネガティブな言葉は口にしない。ただ、2人の息子は何か言いたそうな雰囲気を醸し出してはいたが…。
畠山は実に物腰が柔らかい、“誠実”が服を着て歩いているような男だ。そんな畠山が一度だけ怒りの感情を露にする場面がある。
参院選の開票結果で、参政党が議席を獲得し、その得票率によって、「政党」と名乗る要件を満たす。
その途端、それまでの約束を反故にし、動画の公開を禁止したのだ。それを受け畠山は、電話で猛烈に抗議する。筋の通っていないことは許せない性分なのだ。それは「引退」を口にしていた男とは思えない迫力だった。