「視聴者目線で見たことがない作品を作りたかった」Netflixシリーズ『地面師たち』大根仁監督インタビュー
「地面師、観た?」巷では今そんな会話があちこちで囁かれている。そう、Netflixシリーズ『地面師たち』だ。実在の詐欺事件にインスパイアされた本作は、公開後、日本におけるNetflixの週間TOP10で首位を独走、世界からも多くの反響が寄せられている。そこで今回、監督をつとめた大根仁氏にインタビューを敢行。撮影の裏側から俳優への想いまでたっぷりと伺った。(文・編集部)
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【大根仁 プロフィール】
1968年生まれ。テレビドラマ「モテキ」「共演NG」「エルピス–希望、あるいは災い–」などの話題作を数多く手掛ける。2011年に劇場版『モテキ』で映画監督デビュー。その他の映画作品に『バクマン。』『SCOOP!』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』など多数。2019年に外部演出家として初めてNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」に参加。『モテキ』で第35回日本アカデミー賞話題賞 作品部門、『バクマン。』で第39回日本アカデミー賞優秀監督賞、「エルピス–希望、あるいは災い–」で第60回ギャラクシー賞テレビ部門 大賞など多くの賞を受賞。Netflixシリーズ「地面師たち」が初の世界同時配信作となる。
日常と隣り合った事件現場
―――本作は、2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」を扱った新庄耕さんの同名小説(集英社文庫)が原作になっています。大根監督はこの原作を読んですぐに企画書を作ったと伺いましたが、どのような点に惹かれたのでしょうか。
「実際に事件の舞台を目の当たりにしていたというのが大きいですね。よく五反田を通るんですが、ちょうどそこに事件の舞台となった廃旅館がエアポケットのように建っていて、前々から気になっていたんですよ。
で、ある日、報道陣や警察が詰めかけていて、そこではじめて大手企業を相手取った詐欺事件の舞台だったということに気づいたんです。それで、その地面師詐欺事件に興味を持って自分でも色々調べたりしていたのですが、それから1年くらい後ですかね。
たまたま五反田の本屋に立ち寄ったら、原作小説が平積みされていて、買って読んだら『あ、これやりたい!』と。そこから一気に企画書を書きました」
―――本作は、実在の、しかも最近の事件をテーマとしているとあって、かなりセンシティブな対応が求められたことが予想されます。コンプライアンスをクリアする上で大変だった点はありますか。
「いえ、特にありませんでしたね。確かに原作も実際の企業の事件をモデルにしてはいますが、社名も実際のものを使っているわけではありませんし、基本はフィクションなので。
ただ、日本の地上波テレビドラマだったら、色々なハレーションを起こす可能性があるので、実写化は難しかったかもしれないですね。Netflixの場合はそういった話は一切出ませんでした」