異常とも言えるキャストたちの熱量
『極悪女王』は、テレビ的なプロと映画のプロがそれぞれ持ち味を発揮した結果、「配信」というフォーマットにフィットした新次元の映像作品に仕上がったといえる。
しかし、そんな手練れのスタッフたちからしても、『極悪女王』は思った以上というか、想像を超える仕上がりになったのではないだろうか。
その要因は、オーディションで選ばれたというキャストたちの、異常ともいえる熱量だ。
プロレスラー役を演じた女優たちは、実際にプロレスの道場で練習を重ね、身も心も仕上げたうえで撮影に臨んだというが、このひたむきな努力と情念の爆発が『極悪女王』を比類なき作品に押し上げている。
ダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァは、器用で芸達者なイメージがあったが、それでも愚直に役に挑んでいることが伝わってくる。長与千種を演じた唐田えりか、ライオネス飛鳥役の剛力彩芽もまさに体当たりの熱演で、いままでの印象を覆す化けっぷりだ。
このメインキャストの3人だけでなく、レスラーを演じた女優たちはみんな素晴らしい。クレーン・ユウを演じたえびちゃんはお笑い芸人だそうだが、演技力も存在感も抜群。大森ゆかり役の隅田杏花のシュッとした佇まい、ジャガー横田を演じた水野絵梨奈のジャーマンも見事だった。
ビューティ・ペアのふたりもコスプレっぽくならず、ちゃんと昭和のスターに見える。特にジャッキー佐藤を演じた鴨志田媛夢の、哀しみを漂わせたカリスマ感はなかなかのもの。ブル中野役の堀桃子も、自らのポジションを理解した絶妙な芝居で印象に残る。