テーマに映し出されたキャスト達の生き様
有名、無名にかかわらず、覚悟を決めた女優たちがプロレスに真摯に向きあい、ほぼ吹き替えなしで試合に挑んだことでカメラも肉薄、リアルな感情と肉体のきしみが伝わるような熱闘シーンの数々が生まれた。
逆にいえば、彼女たちがここまですべてをさらけ出せたのは、このドラマが扱っているテーマが「プロレス」だったからだ。プロレスの本質は、虚実の彼岸を超えたところにある。プロレスラーは、どんなギミックやキャラクターに包まれていても、試合を通じて生き様がにじみ出る。プロレスファンは試合の勝敗だけでなく、そのレスラーの人生そのものも見ている。
『極悪女王』のキャストたちも、ドラマとはいえ、プロレスを通ったことで役柄を超えたそれぞれの半生が浮き彫りになる。
ゆりやんの怒りと涙に、その内面に隠された苦悩を。唐田えりかの髪切りシーンに、贖罪と不屈の根性を。剛力彩芽のいらだちに、プッシュされた側の重圧とプライドを…。
女優たちのこれまでの生き様が、プロレスを通すことで垣間見えてくる。これが他のスポーツをテーマにしたドラマだったら、ここまでの情念を感じなかっただろう。