ホーム » 投稿 » 日本映画 » 配信作品 » 一部のファンの間で物議を醸すも…『極悪女王』がプロレス界のタブーに切り込んだワケ。Netflixドラマ考察&評価レビュー » Page 5

人生は「ブック破り」の繰り返し

Netflixドラマシリーズ「極悪女王」世界独占配信中
Netflixドラマシリーズ「極悪女王」世界独占配信中

 プロレスファンにとって物議を醸したのは劇中に出てくる「ブック」という言葉だ。

 舞台となる全日女子プロレスでは、事前の勝敗を取り決めを「ブック」と呼び、それを反故にして勝手に決着をつけてしまうことを「ブック破り」と表現している。

 あえて、この言葉を使わせてもらうと、『極悪女王』はブック破りの果てに未来を掴み取るという物語だ。

 夢を追って自分を表現するためには、誰かを裏切る瞬間がある。与えられた役目をはみ出して、やりたいことをやらなきゃいけない時がくる。そんなブック破りの連続で、それぞれの人生が転がっていく。

 レスラーだけではない。松本香の母・里子が「離婚する」と言いながら、いつまでも夫と別れないのも一種のブック破り。その父が生死の境から生き延びたのも、家族にとってはブック破りである。反則上等。ルールを超えたところに真実のドラマが立ちのぼるのが、プロレスの醍醐味だ。

 本作のラストで実現する同期入門4選手によるシャッフルタッグマッチもブック破り。でも、ああいう瞬間に居合わせたくて、プロレスファンは会場に通い続けている。

 芸能界も同様だ。不倫も、独立も、海外進出もブック破りだ。でも、そこから立ち上がり、ファイトバックして立ち向かう姿をファンは追い続けたい。

『極悪女王』の撮影を乗り越えたキャストたちは、他にはない絆が生まれたはずだ。同時に、心に「プロレス」を宿したはず。それだけでも『極悪女王』は、以前・以後で語られるターニングポイントな作品になったといえよう。
 
(文・灸 怜太)

【関連記事】
【写真】ゆりやん、唐田えりか、剛力彩芽の異常なほどの熱が伝わる劇中カットはこちら。Netflixシリーズ『極悪女王』劇中カット一覧
ラストが超最高…プロレスに無知だからこそ楽しめる、その理由とは? Netflix『極悪女王』徹底考察&評価レビュー
「視聴者目線で見たことがない作品を作りたかった」Netflixシリーズ『地面師たち』大根仁監督インタビュー

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!