“平和ボケ”した日本人の目を覚ます…主人公の真の目的とは? 実写映画『沈黙の艦隊』はひどい? 面白い? 徹底考察&評価
text by 寺島武志
大沢たかお主演、映画『沈黙の艦隊』が現在公開中。本作はかつて社会現象を巻き起こしたかわぐちかいじによる大人気漫画が原作。事故を装い、日本初の原子力潜水艦を奪った艦長と、それを追う日米政府、米海軍や海上自衛隊の面々が描かれる。今回はそんな本作のレビューをお届けする(文・寺島武志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
”映像化不可能”と言われた原作
連載終了後27年を経て遂に実写映画化
本作は、かわぐちかいじ氏により、1988年から1996年まで「モーニング」にて連載されていたマンガを原作としている。根本的なストーリーは潜水艦戦を描いた戦記ではあるものの、核戦争や国際情勢などを絡め、当時の東西冷戦を描くなど、かなり踏み込んだ内容で、国会の場でも注目されたほどだ。
それからおよそ30年。主役の大沢たかおがプロデュースにも名を連ね、製作を日本の劇場版映画では初となるAmazon スタジオが担当、配給を東宝が担当するという形を取り、かつ、大沢が自ら動き、防衛省や海上自衛隊からの協力を取り付け、実写化にこぎ着けた。
上級自衛官が、核ミサイルを搭載した米国の原子力潜水艦を乗っ取るという衝撃的なストーリーであるにも関わらず、本作の製作に協力し、実物の潜水艦を作中で披露するなど、防衛省と海上自衛隊のバックアップがなければ、本作の売りであるリアリティーは表現できなかったに違いない。両省庁には、製作陣のみならず、我々鑑賞者側も感謝しなければならないだろう。
今回、この“実写化不可能”ともいわれた本作の製作にあたって、白羽の矢が立ったのが吉野耕平監督。吉野氏は、『ハケンアニメ!』(2022)、『水曜日が消えた』(2020)など、ヒューマンドラマやサスペンスで名を上げた監督だが、アニメーションやミュージックビデオ、さらにはVFX作品も製作するなど、多才な映像作家だ。