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「脚本に意見をされることは一切なかった」
光石研との共同作業について

映画監督・俳優の二ノ宮隆太郎
撮影武馬怜子

役者の先輩・後輩として出会った光石研と二ノ宮隆太郎。『逃げきれた夢』では、初めて監督と主演俳優という立場で現場を共にすることなった。

「光石さんは、事務所の後輩としてではなく、監督として接してくださいました。また、物語は光石さんから伺ったお話を基に構成しているのですが、脚本に意見をされることは一切なく、自分を信じてくださいました」

オール北九州ロケであるという点も注目ポイント。劇中では、前述の黒崎商店街も登場する。北九州弁によるリズミカルな会話の応酬も見どころの一つだ。

「例えば、関東だと『お前』と言うところを北九州では『アンタ』と言ったりする。その辺の塩梅は神奈川県出身の僕にはわかりません。方言指導に関しては光石さんからもお力添えをいただきました。シーンによっては『この関係性だったらこういう言い方をするかもしれないね』とアドバイスをいただくこともありましたね」

観終わった後、数々の北九州弁が思い出される中、とりわけ印象に残ったのが、末永の積年の友である石田を演じた松重豊さんが発する「しゃーしい(うるさい)」というセリフだ。筆者の耳には、他者との間にバリアを張りがちな末永の心に切り込みを入れる言葉として響いた。

インタビューの最後、二ノ宮監督にそれを伝えると、「あのセリフはどうしても松重さんに何度も言わせたかったんですよね」と嬉しそうな顔を見せた。

(文・山田剛志)

6月9日(金)より新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー

【作品情報】

光石研
吉本実憂 工藤遥 杏花 岡本麗 光石禎弘
坂井真紀 松重豊
監督・脚本:二ノ宮隆太
製作総指揮:木下直哉
プロデューサー:國實瑞惠 関友彦 鈴木徳至 谷川由希子
撮影:四宮秀俊
照明:高井大樹
録音:古谷正志
美術:福島奈央花
装飾:遠藤善人
衣装:宮本まさ江
ヘアメイク:吉村英里
編集:長瀬万里
音楽:曽我部恵一
助監督:平波亘
制作担当:飯塚香織
企画:鈍牛倶楽部
製作:木下グループ
配給:キノフィルムズ
制作プロダクション:コギトワークス
©2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ
公式サイト
Instagram:@nigekiretayume

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