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「撮影を通じて新しく見えてくるものを撮りたい」
表情の芝居と映画づくりの醍醐味について

映画『almost people』© cogitoworks Ltd.
映画almost people© cogitoworks Ltd

―――お話を伺って作品を捉える視野が広がった気がします。石井監督とは役の捉え方、見え方をすり合わせながら撮影を進めていったのでしょうか?

柳「『火水子が狼狽えているように見えるのは嫌だ』っていうことは、話し合ったと思います。でもやっぱり怒りが無いと狼狽えているように見えてしまう。そこの矛盾が凄く悩んだところでした。

前に進みすぎると、怒りのある女性に見えてしまいますし…。表情の作り方にも細心の気を配りました。撮影をした一年前を思い返すと、言葉にするのはなかなか難しいのですが…」

石井「この映画で柳さんは見たことのない表情をされていますよね」

柳「もう出来ないです、あれ本当に」

石井「それは作ったものではなくて、彼女が演じながら体感していったものだと思います。私は見ていて、ただただ驚きました。演じる側は大変だと思うのですけど、最初から色んなことが分かった上で撮るのではなく、撮影を通じて新しく見えてくるもの、それを撮っていくのはやっぱり面白いですし、スリルがあります。

私に与えられた役割はそれを捉えることだと思っています。一方で、なかなか大変なことをスタッフ・キャスト全員に強いているなという気持ちもあり、つくづく因果な職業だと思いました」

―――目のクローズアップが印象的でした。目のアップはどのような狙いで多用されたのでしょうか?

石井「柳さんは圧倒的に眼力が強く、瞳が綺麗な方なので、自然に寄っていったのだと思います。あとは、やっぱり彼女が世界をどう見ているかっていうことがこの映画ではきわめて重要なので、撮影前から眼のアップを撮ることになるだろうと思っていましたし、撮っていて、改めて力のある眼をしてあるなと思いました」

―――柳さんは狭いフレームの中で、目でお芝居をなさるシーンが多かったわけですが、演じる上でどのような点を意識されましたか?

柳「とにかく目に力を入れないことですね。目に印象があったとしても、力を入れるとそれが言葉になってしまうので、『この人、何を考えているんだろう?』って思ってもらえるように、出来るだけ“顔で語らない”ことを意識しました。

目や口など顔の表情の一部に力を入れると、メッセージ性を孕んでいるように見えるのと、どうしたって怒りを宿しているように見えてしまうので。あれだけのことが身の回りで起きていても、色々考えてはいるけれども柔らかい表情でいること。それが異質に映ればいいなと思いながら演じていました。

とはいえ、やっぱり目を撮られている時って、目で芝居をしたくなっちゃうんですよ。変に力を入れたり。だから今までやってきたお芝居と逆の作業に取り組んだ感じです。目で言葉を言わないこと、顔で語らないことっていうのは、滅多に挑戦出来ることじゃないので、悩みながらやりました。でも、とても面白かったです」

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