ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 「役を演じるということはクリエイト」オムニバス映画『almost people』石井岳龍監督、主演・柳英里紗インタビュー » Page 5

「4つの個性がぶつかり合って乱反射する」
未だかつてないオムニバス映画の誕生

映画『almost people』© cogitoworks Ltd.
映画almost people© cogitoworks Ltd

―――ネタバレになるため詳しくは書けませんが、ラストシーンも鮮烈な印象を残します。撮影時のエピソードがあれば教えてください。

柳「私は純粋にあのシーンの撮影は楽しかった」

石井「大変だったけどね」

柳「大変でしたけど(笑)。映画をご覧になった方だけにわかるように言いますが、『せーの!』って言って、こうズズズーって。みんなで協力して。朝5時くらいに夜明けの海と共に。海が凄く綺麗で。撮っていて楽しいシーンではあったのですけど、でもまぁ、ご覧になる方は、考える所でしょうね、あそこは一番」

石井「第二話目ですし、引っかかってもらった方がいいのかなと思いますけど」

柳「あそこで引っかかって、次の作品はどういう気持ちで観ればいいんですか!?(笑)」

石井「見事に繋がっていると思いますけどね。三話も四話も。全然打ち合わせしてないのに」

―――第一話と第二話はストレートでカットが繋がっていますね。自作のファーストカットの前にどんな映像が映っているのかわからない状態というのもイレギュラーかと思います。

石井「あれはプロデューサーのアイデアだと思いますけど、私は凄く良いと思いました。間を空けないという」

柳「あれは凄くびっくりしますよね」

石井「地続きでカットが繋がっていく。とても面白かったです」

―――4本まとめてご覧になった感想を教えてください。

柳「凄いなぁって思いました。さっきからそういう言葉しか出てないですけど(笑)。まずどう処理していこうかなぁみたいな。オムニバス映画って今までも沢山観てきましたけど、ここまで全作品、色んな問題を提起して、突き刺したまま終わっていく映画って中々ないと思います。

とにかく『ものすごい4本を観た』っていう印象でしたね。もし自分が出演者の1人じゃなくて、フラッと入った映画館で観たら、一生忘れられない思い出になっただろうなって思いながら観ていました(笑)」

石井「とても面白かったんですけど、私は時間がオーバーしちゃって申し訳ないなって思っていて…」

―――元々はどのくらいだったんですか?

石井「決まりは一話30分。私の監督話はもっと長くなってしまって。最年長だから足を引っ張らないようにという気持ちがあったんですけど、なんかすごく申し訳ないことをしちゃったなぁって…。

何はともあれ、俳優さんも全員素晴らしいし、一話一話がとっても面白くて、観終わった後に爽やかな気分になりました。一方で、色々なことが心に残る。人間って面白いなとか、僕らは今どういうことに直面しているんだろうとか、色んなことを考えさせてくれる。とにかく『映画を観た!』っていう気分になれますよね。その点、凄くお得な作品だと思いますし、これを観た観客同士が話をしてほしいなって思います。

今は映画を観た後に感想を語り合うっていうことが、なかなか無い時代だと思うので。『私はこれが好き』っていうだけで終わってしまうのはもったいない。この映画はそういう映画ではありません。4つの個性がぶつかり合って乱反射して、何か得も言えぬものを醸し出している。是非多くの方に本作を観ていただいて、話をしてほしいなと思います」

1 2 3 4 5 6
error: Content is protected !!