「役作りとは思い込むこと」
俳優という生業について
―――劇中で吸われている煙草の銘柄は、固定されていたのですか?
「多分、ショートホープだったんじゃないかなあ。ちょっと重いタバコの方が煙がよく出るから、絵になるんだよね。ただ、プライベートでは、もう1ミリぐらいのタールの煙草しか吸わないけどね」
―――月並みな言い方かもしれませんが、そんな語らない演技、佇まいに鳥肌が立ちました。
「ありがとうございます。脚本上でもそうなんだけど、実際、自分の子供が亡くなったら、清みたいに何も多くを語らないと思うんだよね。だから、もし本当にそのような事態が起こったとういうことは考えたくないけど、ありうることだから。
さっきから言っている想像力ってのは、思い込みとも言えるかもしれない。何が役作りかって言ったら、そう思い込むことじゃないかなあ。
もし、泣かなくてはいけないシーンで涙が出ないとうことは、自分の感情が行きついてないってことだからね。もっとゾーンに入れ、もっと思い込めってね。中途半端な芝居をしたら、駄目なんです。思い込まないと」
―――なるほど。
「ただね、思い込むことは大事なんだけど、本当にそういった状況に陥った、そういう行動を起こした人の気持ちというのは、100%わかるわけではないということもまた、然りだよね。
例えば、少し前にある芸能人が家族を巻き込んで起こした事件当時の心境なんてさ、誰だってわからないよ。でも、もしそういった役をやらなければならない場合は、やるのが俺たち役者なわけで。
まあ、可能な限り、キャラクターと類似した経験を自分がしていれば、それを活かすといった役作りもありますね」