多様性のユートピアとしての農場キャバレー
――アメリス監督は、『奇跡のひと マリーとマルグリット』(2015)でも聴覚障がいを持つ少女を主人公に据えていますが、本作にも聴覚障がい者やLGBTQといったマイノリティの人々が多数登場します。こういったキャスティングは、監督ご自身のアイディアでしょうか。
私のアイディアですね。『奇跡のひと マリーとマルグリット』もそうですが、映画を通して、ハンディキャップを持つ人や社会の隅に追いやられている人に光を当てたいという思いがあります。
――つまり、本作のキャバレーは、ある種のユートピアというわけですね。
そうですね。実話をモデルにしているというのもそうですが、出自の違う人が一致団結し、お互いに支え合って一つのプロジェクトを遂行する姿を描きたいと思っています。
――作中には、ダヴィッドをはじめとする村人たちが、挿入歌を歌いつなぐというシーンもあります。こういった音楽の使い方も、共同体の一体感を高めるという監督の意図が感じられます。
音楽には、人々を結びつける力があると思っています。だから本作でも、音楽を通して孤立状態を抜け出し、他者に向かって一歩踏み出していく姿を描いています。