「役に取り憑かれているような芝居」
ぶっ壊れた主演俳優・石原さとみが起こす奇跡
ーーー実際に石原さんを主演に迎えて撮影をされましたが、かなり丁寧に演出されたと聞いています。いかがでしたか?
「かなりぶっ壊れた俳優でしたね。よく役になりきるって言うじゃないですか。そのなりきる深さは俳優によって違いますが、石原さんの場合は、役に取り憑かれているような芝居になるんですよ。
今回も沙織里に深く入り込んで没頭していました。だから監督として芝居をコントロールするのが難しかったです。『ここのセリフの間をあけてください』とか言えなくて…ほぼ野生動物と仕事をしているようなものなので(笑)こういう俳優は初めてでした。というか、石原さとみさんみたいな俳優は誰も会ったことないと思いますよ」
ーーー映画を拝見しましたが、沙織里という女性は、行方不明の幼い娘を探すことにのめり込んで狂気スレスレでしたが、違和感はなかったです。
「『ミッシング』に関しては、石原さんの野生的な個性が役にはまったと思います。石原さんは芝居の調整が効かない分、奇跡が生まれる瞬間があるんです。僕が芝居の技術を引き出すというより、何度もテイクを重ねて、奇跡の瞬間を待つという感じでした。でも本人は野生的なタイプであることに自覚がない。だから余計に怖いんですけどね(笑)」
ーーー意外と自分の特性はわからないのですね。
「石原さんの場合、野生的な個性ゆえに嘘がないんですよ。技術が見えない分、ドキュメンタリーのような迫力がありました。『ドッキリに引っかかった人みたいに見えるな』と思いましたね。それくらい一つ一つの芝居が生々しかった。でも撮影は疲れましたね〜(笑)。本人は僕の映画に出るのは初めてなので『吉田組はいつもこんな感じで撮影しているんですね』と言われましたが、正直、全然違います、あなたのときだけです(笑)」