「野生的な石原さんとのギャップが凄すぎました」
俳優・中村倫也のローテンションの魅力
ーーー行方不明の幼い娘を探すためにずっと冷静さを欠いているような沙織里を、夫の豊は一歩引いて見ていますが、豊を演じられた青木崇高さんはいかがでしたか?
「沙織里と警察やマスコミの板挟みにある夫を演じてもらいましたが、現場でもあの役のまんま、板挟みにあっていました(笑)。
撮影に入る前、石原さんと青木さんと娘の美羽役(有田麗未)の子と、公園で遊んでもらったんです。僕はちょっと遠くから見ていたんですが、石原さんは本気でキャーキャー言いながら遊んでいました。子役がけっこうおてんばなタイプだったので、走り回って大変だったんですよ。
石原さんは『そっちは危ないから戻って!』とか大きな声で注意していて、それを苦笑いしながら見守る青木さんという感じ。あれを見たとき、この家族はもう始まっているなと思いました」
ーーー中村倫也さんも吉田監督作品は初ですが、監督がキャスティングしたのですか?
「そうですね。ずっと好きな俳優だったので、いつか出演していただきたかったんです。中村さんが僕の映画に出るのなら、どういう役がいいだろうと考えたとき、あまり感情を表に出さない静かに表現をするような役がいいのではないかと思いました。
中村さんは少し力を抜いて演じる感じが上手いんですね。コメディー映画でもすべらない技術があるんです。最近はちょっとポップなイメージがあるから、真逆の役を演じてもらったら面白いかもしれないと、テレビ記者の砂田役をお願いしました」
ーーー中村さん良かったですよね。砂田はいろいろな気持ちを自分自身に押し込めて淡々と仕事をしているけれど、ときどき溢れ出てしまう……。伝わるものがありました。
「中村さんは期待通りでした。石原さとみさんとは真逆でテンションはゼロ(笑)『ミッシング』頑張るぞ! という気合いも無ければ、不満も言わない。中村さんは砂田と同じスタンスで現場にいました。
砂田は過剰に反応せず、真実を伝えようとしますが、中村さんの立ち居振る舞いも、それに似ていました。だから僕も仕事しやすかったです。野生的な石原さんとのギャップが凄すぎました(笑)」
ーーー『ミッシング』では、これまで見たことのない野生的な石原さとみさんを見ることができる映画ですね。
「本当は主役として、この作品の温度を決定し、維持していく立場なんですが、この映画では周囲が石原さんを支えようという感覚で動いていました。それをやることによって、石原さんの引き出しがガバガバと開いていったんです。それが面白かった。僕もいつの間にか石原さとみファンになって、『今日は何が見られるのかな』と撮影が楽しみになっていきましたよ。あの芝居のテンションは本当にすごかったです」