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「『吉田は面白いことやっているな』と印象付ける」
自分の色を出す金太郎飴のような演出

©2024「missing」Film Partners
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ーーー吉田監督の映画作りについてお話を聞きたいです。監督はあまり同じ俳優は使わないというのを聞いたことがありまして。それについて何か考えがあるのかなと。

「そうかなあ。『ミッシング』にも出ている三島ゆたかさんは僕の全ての映画に出演していますよ。他にもおじさん俳優は常連さんが結構多いです。確かにメインの俳優さんはいないけど、他の監督もそんなに同じ人を使って撮っています? ああ、でもレギュラーメンバーのようにして撮る監督はいるかもしれないですね。

たぶん自分の作品を金太郎飴みたいにしたいんでしょう。僕も割とそういう考えはあります。例えば、大事なことはすべて居酒屋で喋る。居酒屋で揉めるシーンが必ず出てくる…とか」

ーーーその理由はなんでしょうか?

「やっぱり映画は監督のカラーが大切だと思うんですよ。いろんな題材を器用にこなせる人はいるけど、カラーが見えない監督もいるんです。つまり「○△監督の作品っぽいよね〜」と言われるのは、その監督のカラーが作品にしっかり投影されているから。そうするためには、何本か同じことをしないとそういう風に見えてこない。

だから僕は、演出面ではわざと同じことをやっています。この映画は『空白』の姉妹映画に見えるように、音楽は『空白』と同じ世武裕子さんですし、撮影の仕方もほぼ同じです。そういう空気感をわざと出しています。

吉田恵輔の映画っぽいよねと言われるには僕のカラーが必要だし、そうやって色を出すことで『吉田は面白いことやっているな』と印象付けることができる。それが次の映画につながっていくと思うんです」

ーーー吉田監督は編集作業もすごく早いとお聞きしました。

「僕の映画は絵数が少ないから3〜4日で完成しますね。編集も想定し、カットを決めて撮影しているので。最初に芝居を見た瞬間に、こう切っていこうと編集も考えています。だからプロデューサーから『このシーンは寄りの絵はないの?』と言われても『ないない、撮ってない』と(笑)スクリプターから編集マンにわたった時点でほぼ完成しているようなものなんですよ。

編集に時間を要するのは、素材を多く撮って編集しながら決めていくからだと思います。僕は決めカットしか撮らないから、素材が多すぎて悩むことはない。撮影を早く終えて飲みに行きたからね(笑)」

ーーーちなみに、個人的に気になったことですが、沙織里の職場をみかん農園にされた理由などあるのでしょうか?

「さっきもお話ししたように『空白』の続編を作ろうと思っていた映画なので、蒲郡(がまごおり)で、もう1回ロケをしようと思ったんです。あそこにはみかん農園がいっぱいあって、『空白』の撮影の間、よくみかんをご馳走になっていたんですよ。みかん農園でも撮影できたらと考えていたので、今回みかん農園を登場させました。だからみかん農家そのものに意味はなく、僕が撮りたい場所だったということですね」

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