通りいっぺんのコメディ映画にはしないという武内英樹監督の野心

次に声高に強調したい案件として、武内英樹監督は、生粋のお笑い芸人好きだということが、垣間見れるということである。

野生爆弾のくっきー！、ダイアンの津田篤宏、アキラ100%、ハイヒールモモコ、我が家の杉山裕之、デンジャラスのノッチ、クワバタオハラのくわばたりえなど、なかなかの渋いラインナップが出演している。

しかも、これまた素晴らしいのは、彼らはあくまで「俳優」として出演しており、ちょいちょい他の映画等で散見される、芸人が芸人役として出てきて、自身のネタを劇中で披露するなどといった、サムい演出が一切ないという点だ。

仮に彼らのことを知らない人が観ても、普通に「誰、この俳優？芝居、上手いね～」と思わせる確かな演技力を持ち合わせており、コメディーパートは主要役者陣が演じ、お笑い芸人陣はシリアスな演技に徹するという、ある種の逆転現象がここには見られる。

冒頭から出てくるアキラ100%なんて、途中まで誰だか気付かず、舞台上がりの名もなき俳優だと思って観ていた。また、くわばたりえの配役は「ここは相当狙ったな～」と思われるポイントでもある。彼女は、現実世界のパートで、埼玉県に住む関西人役として登場する。

ここのネタ元は、「クワバタオハラがいたら、そこは大阪や！」という芸人・永野のギャグだろう。関西のバラエティ番組で引っ張りだこの、クワバタオハラが居れば、どんなオシャレな場所でも大阪になってしまうではないか！ という関西のおばちゃん特有の図々しさをイジったネタだ。

このニッチな小ネタを知らなくても、気の良い大阪のおばちゃんとして認識できるキャラクターであることは間違いない。さらに、彼女は助産師という役柄であり、若月依希（朝日奈央）の出産の手助けをするという感動的な展開にも思わず唸らされた。