誰も傷つけない愛のある笑いと映像美

ちなみに、時を同じくして別の場所で同じラジオドラマであるこの物語を聞いていた、若月夫婦。

今作のキーポイントとなった、埼玉県の道路上における「飛び出し注意」を喚起する、滋賀県発祥の名物看板「とびだし とび太」にちなみ、息子の名前を「とび太」と名付けることにするといったオチも、一見ふざけているようだが、ちょっぴり涙腺が刺激される。

さらに、終盤の素晴らしい場面にも言及したい。

嘉祥寺夫婦たちは逮捕されるのだが、「自分らはともかく、関西の人々は悪くない！」「滋賀の人たちも悪くない！」と、叫ぶのだ。

こういった一言を残すことで、彼らも地元愛が溢れるがゆえの愚行を行ったことがわかり、根っからの悪人ではないことが伝わってくる。

また、当然、多くの関西人も観賞しているはずだが、広告でGACKTと二階堂の主演俳優２人が頭を下げ、今作冒頭に作者が謝って始まるという時点で、最初から最後までネタとして笑い飛ばせるようになっているという点は特筆すべきだろう。

そして、大阪の「通天閣」が実はミサイルであり、それを迎撃するための埼玉の秘密兵器として、知る人ぞ知る「行田タワー」で対抗するラストバトルとなる。「通天閣」に「行田タワー」が勝てるとは到底思えないが、それを持ってして迎撃するという大オチも、くだらなすぎて最高なのである。

前作の影響から埼玉県の注目度、若者が住みたい県ランキングとしては、うなぎ上りなわけだが、「行田タワー」が新たな観光・聖地巡礼スポットとなることは間違いない。

とにもかくにも、お互いの県同士で争いながらも、誰も傷つけてはいない実はハートウォーミングな本作。ぜひ劇場の大画面でその映像美と共に楽しんでほしい。

（文・ZAKKY）

【作品概要】
監督:武内英樹
原作:魔夜峰央
脚本:徳永友一
キャスト：GACKT、二階堂ふみ、杏、加藤諒、益若つばさ、片岡愛之助、堀田真由、くっきー！（野性爆弾）、高橋メアリージュン、和久井映見、アキラ100％、朝日奈央、山村紅葉、ハイヒールモモコ、川崎麻世、藤原紀香、津田篤宏（ダイアン）、天童よしみ、戸塚純貴
主題歌:はなわ「#ニュー咲きほこれ埼玉」（Victor Entertainment）
音楽:Face 2 fAKE
配給:東映
©2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会
2023年製作／116分／G／日本
劇場公開日：2023年11月23日
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