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主人公よりアイドル適性が高い残りのメインキャラ3人

(c)2024「トラペジウム」製作委員会
(c)2024「トラペジウム」製作委員会

そんなゆう以外の残りのメインキャラ3人はというと、ゆうが逸材と見込んだ通り、三者三様でアイドル適性の高いメンツばかりだった。

キャラ立ちした華やかなお嬢様の華鳥蘭子、童顔でキュート系に全振りした理系少女の大河くるみ、男ウケ抜群の清楚さが魅力の亀井美嘉。実際にSNSのいいね数やコメント数、ファンレターの数は3人がトップを競っており、ゆうは3人の一歩後ろの実績だった。

そして皮肉なことに、3人は特にアイドルへの熱意がない。ゆうのスカウトによって、なりゆきで結果的にアイドルになってしまった3人なのである。もちろん彼女たちなりに、置かれた環境の貴重さは実感していたし、精一杯努力もしていた。しかし、次第にゆうと3人との間で価値観の違いや軋轢が生まれるようになる。

ゆうも、3人のおかげでアイドルデビューできたことは分かっているし、3人を大切に思っている心に嘘はなかったが、やはり複雑な思いが渦巻いていたようだ。そして遂にアイドルグループ東西南北は解散し、3人は普通の女の子に戻ってしまうのであった。

上記のように、客観的に見て才能に恵まれている人が、本当に才能通りの道を歩むとは限らない。その理由は様々で、

「向いているけれど、認知する機会がなかった」
「向いているけれど、活用方法が分からなかった」
「向いているけれど、興味や熱意が湧かなかった」
「向いているけれど、それ以上の向いていない特徴があった」

など多様な背景がある。とにかく、ゆう以外の3人はアイドルを辞めた。そして新たな夢や、欲しかった本来の生活に戻っていった。本作のラストの大人になった4人が集まるシーンで、アイドルを続けていたのはゆうだけだったのである。

そう考えると、客観的な才能は裏方寄りだが、結果的に一番表舞台で輝いたのがゆうということになる。これは何よりも「本人がそうしたいと思っているかどうか」が大事ということを証明している。

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