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随所に散りばめられたコミカルな映像表現ー映像の魅力

板谷由夏
板谷由夏Getty Images

脚本に面白さが全集中している作品だけあって、映像に関してはあまり特筆すべき部分はない。一つ一つのカットも、かっちりと人物を撮ってはいるものの、そこに映像的な面白さはあまりない。ヤクザの事務所や宮田の家も、予算の関係か全体的なしつらえが安っぽく、いかにも作り込んだ感は拭えない。

とはいえ、シーンごとに見れば、ハッとさせられる場面が存在するのもまた確かだ。例えば、ヤクザの事務所で神田が詰問されるシーンでは、パンツ姿で正座している神田をにらむ新入りヤクザを神田目線からアップで捉えた後、微動だにせずに神田を睨むヤクザたちの姿を捉える。このあたりは、かつての北野映画を連想させるようなコミカルさが感じられる。

極め付けは、宮田の家に忍び込んだ浅井が、ベッドの下に潜り込むシーンだろう。ベッドの隙間から見える宮田と桑田の足だけで、2人が何をしているのかを推測する演出は、なんとも巧い。欲を言えばもう少しこの演出で遊んで欲しかったというのが正直なところだが。

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